理想的偶像

みみず

第1話 みんなのもの

 あなたと私が出会って23年。初めてあなたに恋をしてから7年が経った。端的に思い出を述べることは出来ないくらい、あなたと私は同じ時代を共に過ごしてきた。私にとって世界で一番大切な人だった。

 初めて付き合ったのは16歳。高校2年生の夏。きっかけは、あなたが異性に興味を持ち、一番近くにいたのが私だったから。今考えてみれば私も異性と付き合うということに強い憧れを抱いていた時期だった。中学生の頃くらいから友達に彼氏ができてきて、憧れのデート、セクシーな話題、別れの辛さを耳にするようにはなっていた。

 しかし、私たち2人は毎日楽しく遊ぶことに夢中で、気がつけば高校生になっていた気がする。確かあなたがついに彼女が欲しいと思い始めた理由は、親友のB君に彼女ができたからだった。その頃私たちは毎日一緒に登下校をしていた。定期的に付き合っているのではないかと友人に茶化されるのも慣れっこのはずだった。なぜあの時あなたは私にキスをしたのか。なぜ私は受け入れたのか。そんな事は分からなかった。ただ、あの頃の私たちは若かった。

 今、思い出しても胸が熱くなるような思い出だった。逆に他の恋愛の記憶なんて殆ど無かった。私とあなたは今までの7年間で4回、付き合って別れている。その間に他の人がいた気もするが、覚えていない。結局、あなたが一番だと思い知らされるための経験でしか無かったからだ。

 窓をあければ見えていた隣の家にあなたはもういない。あの頃すぐ見えていたあの笑顔。今は直接見るより、テレビで見ることの方が多くなった。

 最後に別れてから1年と半年が経とうとしている。相変わらず可愛い笑顔、洗練された雰囲気。私の知ってるあなたなのに、少し知らないあなたになっていた。

 彼は2年前にスカウトされて、モデルになった。

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