第4話 巨大熊をテイムしました。 3日目

 睡眠をとる場所といったら、草刈りを終えた草原であった。

 背中にちくちくとする痒みを感じる。

 制服を通して、背中の中に痒みを与えるほど、雑草は頑丈でもあった。


 空を見上げると、永遠の青空がある。

 きっとあの青空の果てには何かがあるのかもしれないだろう。

 そしてないのかもしれない。


 ただただ呆然と空を眺めていたら。

 

 目算で5メートルくらいはするであろう巨大熊がこちらをじっと見ていた。


 俺様の脳裏に死がよぎった。

 とにかく食べるものはないだろうかと必死で探す。

 なぜかポケットにチョコレートの破片があった。


 ドケチな俺様はチョコレートを5分の1にしてポイっと投げた。


 すると巨大熊はそのチョコレートを口の中に手で運びながら、

 飲み込んだ。


 次の瞬間、巨大熊の頭上に名前が表示される。



「はい?」


 すると先程までぐっすりと寝ていた魔法猫であるティータ猫師匠が肩にいた。


「おめでとう、テイムが完了した。テイムの仕方はいろいろあるが、お主が持っているその茶色い塊が旨過ぎて、とんでもないテイムパワーとなったようなのにゃ」


「は、はは」


「名前を付けてさしあげようではないかにゃ」


「そうだな、グリドリーでどうだい?」


 名前を表示させる部分にはメスのマークが付いていた事に気づいた。

 やはり強そうなメス巨大熊にはグリドリーが似合っていると思った。


「がうがう」


 とグリドリーが喜びの声を上げた。

 俺様としてはほっとした。


 改めて新しい仲間となったグリドリーを眺め渡す。


 5メートルの巨躯、そして茶色い毛、頑丈な両手の爪と両足の爪。

 あんなものに襲われたら即座に死ぬ事が出来るだろう。


 新しい仲間が加わったので、俺様とグリドリーは森の伐採を始める。

 まず必要なものは木材となり、次に木材を置く場所の建設、あとは、石材と鉄材が取れる場所の確保、ここが無人島に近いことで、資源の奪い合いがない事には非常に助かっている。


 俺様が右腕と左腕に伐採スキルを発動させる。

 右腕と左腕が鎌のようになり、まるで鋭利な巨大カミソリでも振り回しているかのように。


 今日も数百本の伐採に成功した。

 あとグリドリーに指示を出すと、グリドリーが大木を運んでくれる。

 とりあえず置く場所を決めていないので。


 城というか家となるビルの建設場と刑務所の壁みたいなものの建設場の他の部分に置くほうがいいだろう。


 ビルの周囲には色々と設備を整えたいのだ。

 なので素材は少し離れた場所に置けるようにしておきたい。


 俺様はふむと顎をなでながら考えている。


 決めたのはビルからさほど遠くなく、崖側のほうに向け、崖側から下った場所に材料置き場と決めた。

 これから色々な材料が出てくるだろうから。

 まずは木材置き場をセットする。


 現在200本越えの木材たち。

 それでもまだまだ足りない。


 まだまだ木材を伐採出来る。


 あまり伐採しすぎると、自然体系が変わってしまうので、そこは気を付けている。


 川や海にも色々な資源があるだろうし、あそこに見える巨大な山にも何かがあるだろう。


 無限に広がる、資源にわくわくしながら、伐採を続けるのであった。


 グリドリーは一生懸命ひたすら木々を運び続けていた。

 

 どうやらグリドリーが得た経験値は俺様のほうに流れてくるみたいだ。

 それを発見して、配下を沢山増やす事により、俺様最強伝説を作る事が出来るのではないだろうか? とわくわくしてきた。


 かくしてレベル4→5に上昇することとなる。

 今回覚えたスキルはというと。


【使役の目】【使役移動】


「では説明を始めるにゃ」


 そこには猫師匠のティータ猫がいた。


 いつの間にいたんだ。説明するのが魔法猫の役目でもあるのだから、仕方のない事でもある。


「使役の目は、グリドリーなどの使役している生き物の目を借りること、まぁ烏の目と内容は同じにゃ、次に使役移動は、使役している生き物のところに瞬間移動したり、瞬間移動させたりすることができるにゃ、この能力はとてつもなく便利とされているにゃ」


「なるほど、使役の目はグリドリーなどが眠っていても使えるのか?」


「無理だにゃ、使役しているモンスターが見たものを見る事が出来るだけだにゃ」


「うん、分かった。使役移動については、いつでも出来るのか?」


「そうだにゃ、いつでもできるにゃ」


「ありがとう、グリドリー飯にするぞ」


「がううううう」


 どうやらグリドリーはこの時を待っていたようだ。


 ちなみに今回の飯は何か分からない果物だ。

 しいて言えば赤いバナナ、つまりリンゴとバナナを合体させたようなもの。


「これはバリンというものだにゃ、沢山の生き物がバリンに生かされている。この島でしかバリンは生息しないとされているにゃ、だけどこの島には腐るほどバリンがある。腐ってないけどねにゃ」


「このバリンを大量生産出来ると思うか?」


「うん、できると思うにゃ、バリンは木々から生えるとされておるにゃ、木になるには数年は必要だにゃ」

「なるほど、例えば俺様が何かしらのスキルを覚えて、成長スピードを上げるという事は出来るか?」


「うん出来るにゃ、伝承にも残っているにゃ」

「了解した。って、グリドリー全部食べるなよ」

「がうがう」


 グリドリーは一生懸命にバリンを食べ続けていたのだ。



 その日の夕食はグリドリーにほぼ食われてしまった。

 俺様はバリンを1個しか食う事が出来なかった。

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