第19話




放課後になると、中島と 部長の岡田が いつもの時間に美術準備室に来た。


岡田は中島の後ろに隠れて、キョロキョロと周りを見ながら入ってくる。



「大丈夫。いないよ。」


「良かったぁ。」



昨日あったことを中島に話したんだな。


姫を守るナイト…誰が見ても素敵な恋人同士だ。


良かったな、中島、岡田と付き合うことが出来て………


二人の姿にチクリと胸が傷む。



「先生、鍵 有難うございます。」



岡田は部室の鍵を受け取るとすぐに飛び出していく。


岡田を見届けると中島はいつもの場所に座り参考書とノートを鞄から出した。



「あ、そうだ、体育は間に合ったのか?」


「俺達は間に合ったんですけど、他が遅刻をして十周走らされました。」


「それは災難だったな。」


「はい、翔がめちゃくちゃ怒っていました。」


「だろうな。あ、ごめん、勉強の邪魔して悪かったな。」



中島はにっこりと笑うと「大丈夫です」と言って勉強を始めた。


この頃は昼休みを雑談、放課後は勉強と使い分けるようになった。


俺は棚から明日の授業に必要な道具の準備を始めた。


背後から香るシトラスの香りと参考書のページをめくる音が聞こえる。



この部屋のどこにいても全神経が中島の方に向いてしまう。


中島が俺の事を何とも思っていなくても ここにいてくれるだけで嬉しかった。






明日の授業の用意も一通り終わり、暇つぶしのために持ってきた小説を開く。


1ページ目を読み始めたと同時にLIMEの着信を知らせる音が鳴った。


見ると大学のサークル仲間からだった。


こいつは筆不精で中々連絡してこない奴なのに……。



「珍しい……急ぎの用事かな?」



急いで読むと信じられないことが書いてあった。




毅が結婚する……と。




「嘘……だ………俺、何も……聞いて…」




俺は毅に捨てられた。

 

 

 

 

 

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