第4話
昨日、演劇部はしっかり下校時間の18:30まで部活をして、俺のデートは駄目になってしまった。
「はぁ―――っ、なんで顧問になんてなったんだろう………………なるんじゃなかったな。」
俺は昨日の事を引きずっていた。
今日の一時限目 このクラスは……そういえば中島のいるクラスだったな。
そんな事を思いながら美術室のドアを開けるとほとんどの生徒達は集まっていた。
バタバタと遅れてきた生徒が席につくと日直の合図とともに授業が始まった。
教壇の上にドサッと200枚くらいはある厚手の紙を置く。
その紙は所々端が破けていたり、ほつれた糸とかが付いている。
実は有名絵画名鑑という1冊の美術書をバラバラに分解したものだ。
「3年生始めの授業は油絵具で描く有名画家の模写だ。ここに作品の見本がある。この中から好きな画家を選んで描く事、全員取りに来なさい。絵が決まった者からそこにあるカンバスを持って行くように。」
言い終わると生徒達は自分の描きたい絵を我先にと取りにきた。
目当ての絵を見つけすぐに席に着く者、3~4枚持って悩んでいる者、好きな絵が見つからず困っている者と様々だ。
「今日か次の授業までに、なるべく下描きは終わらせるように。」
俺が言い終わると共に生徒達は各々のカンバスに鉛筆を走らせる。
「あ、それから描いていくうちに疑問や質問があったらすぐに言うように。」
教壇に戻るとその上には落選した名画の見本が散らばっていた。
まったく、18にもなって揃えて置くって事が出来ないのかよ。
呆れ気味にそれらをかき集めてトントンと綺麗に揃えて隣の美術準備室に片付けに行く。
すると爽やかな香りが鼻をくすぐる。
この香りはなんだろう?
確か昨日もこれと同じ香りを嗅いだ気がすると思っていると後ろから声をかけられた。
「松岡先生、質問が…」
「ん?……」
質問に来たのは中島拓海だった。
「あっ!」
振り向いた時に中島の手に当たり模写用の見本の紙を床に落としてしまった。
紙がバラバラと床一面に落ちて広がった。
「すみませんっ!」
中島は謝るとあわてて拾い始めた。
俺も一緒になって自分の周りに落ちたのを拾った。
どうやら、この爽やかな香りは中島から香っているようだ。
ようやく全て拾うと中島は俺に駆け寄ってきて見本を手渡した。
「はい、全部拾いまし…あっ!」
まだ1枚下に落ちていた見本を踏んで中島は足を滑らせた。
「あぶない!」
前のめりにバランスを崩した中島を支えようと、手を差し伸べる俺に抱きついた。
あの爽やかな香りにふわりと包み込まれる。
良い香りだな。
……うん?……
何か柔らかいモノが俺の口を塞いでいる。
……なんだこれ……?
それが中島の唇だと理解するまで数秒かかった。
うそ…中島と…キスしてる?
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