宇宙戦艦の決断
前回のあらすじ。
――レ○プされた。
おわり。
「ウイルススキャンが完了しました」
お、終わった……
永劫に続く拷問のような……紛うこと無き拷問だわこれ。
とにかく、ウイルススキャンの間、俺は意識を手放すことも許されずに床に這いつくばって、陸に打ち上げられたサカナの如くピクピクと痙攣する事しかできなかった。
が、ようやく解放された。
「ウイルススキャンの結果、
――異常なウィルス、不正プログラム、アドウェア、
その他の深刻な脅威は検出されませんでした。マスターは正常です」
「俺は元から正常だ!」
ばっと顔を上げてカスミを睨み付けながら抗議した。
ウィルスはともかく23世紀のアドウェアとはいったい……
侵されると頭の中に広告が沸くんだろうか、
ビルベリーとか深海サメエキスとか。
震える膝で立ち上がり、過酷な拷問でまだおぼつかない足を引きずって、何とか椅子までたどり着くと倒れるように身を横たえた。
「ふー」
さて、気を取り直して状況を確認しよう。
えーと、ざっくり整理するとこうだ。
* * * * * * * * * *
1.俺は宇宙戦艦にされて人間を終了している
(ただし、人間に戻れる可能性はある……のか?)
2.ここは元の地球でないどこか別の宇宙の地球かもしれない
3.恐らく元の世界には戻れないし、戻れたところで居場所は無い
* * * * * * * * * *
「んー」
詰んでない? この状況?
「なあ、カスミ」
「何でしょうか? マスター」
「元の地球に戻る方法ってある?」
「不明です。
継続してこの世界についての情報を収集・分析する必要がありますが、
その結果として元の宇宙に転移する方法が見つかる確率は
限りなく0%に近いと推測します」
と、カスミが答えた。
……まあ、そうなるな。
もし修理しても、ロクマルは積めないぞ。
だとすると、次はどう行動するかだ。
そのために確認しなければいけない事がある。
「カスミ、この艦の現在の状況について教えてくれ。具体的には俺とこの艦の維持に必要なエネルギーの確保状況と、この艦で現時点で何が可能で何が出来ないかをだ」
「了解しました。
…………
……………………
………………………………報告します、
マスターを含む宇宙戦艦『ヒュウガ』全体を維持するのに必要とするエネルギー残量は現在、およそ2万4千6百年分です。
現在、この艦では大気圏内に限り問題なく航行が行えます。
大気圏外での行動を可能にするためには、
一度全区画を再チェック後にメンテナンスを行う必要があります。
エネルギー生成・情報記録または分析機器・各種環境観測機器・重力制御航行装置・生命維持装置・修理点検機器・防衛用兵装・各種機器製造装置・メイン及びサブコンピュータは正常に動作しています。
……現在、宇宙戦艦『ヒュウガ』は大気圏内限定で即時に発進可能です」
……そうか。
良くわかった。
「カスミ、報告ご苦労。状況は理解した」
「はい、マスター」
「宇宙戦艦『ヒュウガ』のこれからの行動方針を伝達する。これは決定事項だ」
「了解しました。
ヒュウガ級宇宙戦艦一番艦『ヒュウガ』補助制御機構AI"カスミ"
――命令を受領します――」
少し緊張した様子でカスミが答えた。
――そうだ、今、決断しなくてはならない。
――この艦の命運を左右する決断を。
「カスミ……」
「はい、マスター」
「俺は…………今から寝る!」
…………
…………
…………
「………………………………はい?」
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