変わった夢を見た。

楪 玲華

第1話 a=1

変わった夢を見た。


それはとても幸せな夢だった。この時間がずっと続けばいいのにと思うような夢だった。だからこそ、私は悲しくなった。夢ならばいつか覚めてしまう。人がいつか死ぬのと同じように。


人生はまるで悪夢みたいだ。数十年間の悪夢。何度ももがき苦しんで、でもどれだけ頬をつねった所で覚めない夢。それなのに神さまは、悪夢の中にもこうやって、少しだけ希望を見せるんだ。


幻想にだけ縋っていたい。都合のいい事だけ見ていたい。それで破綻するような人生なら、いっそ終わらせてしまいたいと思う。


人は言う、そんなしょうもない理由で人生を終わらせるな、と。そう聞く度に私は、ああ、私の人生は、この綺麗な海に飛び込む言い訳すら生み出せないようなものだったのかと悲しくなる。この悲しさは、この、全部を世界のせいにするような醜い感情は、何も生み出してはくれない。私を引き止めるだけ。あーあ、今日もダメだったや。そう一人笑った声も、日が沈み暗くなった空に吸い込まれてしまう。私は書きかけだったスケッチを黒く塗りつぶした。

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