バカな天才が異世界に転生したら
枯渇信者
第1話 転生して…
―――ここはどこだ?
気がつくと、俺は暗くて狭い空間の中にいた。俺の周りを水が覆っているようで、呼吸ができない。だが、なぜか苦しいというわけではない。
―――俺は確か死んで......
そう。死んだのだ。学校からの帰り道で友達がトラックに轢かれそうになっていたところを突き飛ばして俺が代わりに轢かれて死んだ。そう、死んだはずだ。走馬灯だって見えた。まさかこれが死後の世界というやつなのか?ならいつまでこの状況が続くんだ?もしかして永遠にこのままってわけじゃねえだろうな?
と、そこまで考えたところで唐突に外へ押し出されるような感覚に陥る。どうやら頭の方に出口のようなものがあってそこから外に押し出そうとこの空間自体が動いているようだ。
そのまましばらくして、やっと頭が外に出たような感覚がした。いきなり暗いところから外に出たので、眩しくて目が機能していない。そのまま立ち上がろうとしたが、足に、っていうか体全体に力が入らない。そして数十秒して目が明るさに慣れると……
目の前にとても大きな女性の顔があった。周りにあるものも俺が知っているものよりずっっっっと大きい。そこまで把握したところで俺は理解した。
あ、これ転生ってやつや。と。
それから三年が経過し、俺は転生した世界の状況をある程度把握した。まず、よくあるファンタジー世界のようで魔法という概念があり、ある程度は結構みんな普通に使えるようだ。生まれつきの才能がどうとか魔力量がどうとかはあんまり関係ないっぽい。よかった、才能無いから魔法は使えません!って感じじゃないっぽいね。
んで、俺が生まれたのは小さな村の平民の家っぽい。一応長男らしいんだけど、貴族でもないしあんまり関係ないよね!
そして俺の名前はユリウスらしい。超気障ったらしい。超恥ずかしい。マリアって名前の人(多分お母さん)がそう呼んでたから多分間違いないと思う。そして今日、俺は初めて普通に喋ることにした。実を言うと一歳の頃から普通に話せたんだが、怪しまれそうだし目立つのも嫌なのでちょっと遅めにしたのだ。そのかわり、第一声はこれだ。
「ママ、魔法について教えて。」
その時のマリアの驚きようといったら尋常じゃなかった。全然喋らないと思っていた息子がいきなり魔法を学びたいと言っているのだから。マリアはこれは神のご意思だと思ったらしく、村中を駆け回って魔法に関する資料を大量に集めてきてユリウスの前に積み上げた。
「さあ、ユリウス、魔法のお勉強をしたいのよね?」
「うん!でもまだ字は読めないから読み聞かせみたいな感じで教えてほしい!」
「……っ!」
マリアは絶句した。何故この子はこんなにも話せるのか、こんな言葉をどこで学んできたのか。不思議でしかなかった。
「ねえ、ユリウス?誰かとお話ししたことある?」
「えっとね、夢の中でおじさんと話してたの。そのおじさんが、『怪しまれるから三歳までは他の人の前で喋るな』って言ってたの!」
我ながらかなりひどいいいわけである。こんなので騙される大人なんかいるはずがないのだが…………
「…そう。きっとその人は神様っていうとーーーっても偉い人なのよ。やっぱりユリウスは神様に愛されているんだわ!」
うん。知ってた。
三年間見てきて、この人はかなり頭が緩い人なんだと分かっていた。だからこんなすぐにバレそうな嘘でも通じるだろうと判断したのだ。
…彼女が悲痛な顔をしていたのは何故だろうか。
「さあ、魔法のお勉強を始めましょう!」
うん、思ってたよりも緩かった。
魔法について習ったことは以下の通り。
・空気中に魔力が満ちている。それを使って魔法を行使することができるが、魔力が極端に多いところでは人間は生きていけない。
・魔力を吸収して体の中にためておくことができる。一度体の中に取り込んだ魔力を使って魔法を行使したほうが威力が上がるし消費量も少ない。
何回も魔法を使って慣れてくると扱える魔力の量がどんどん増えるらしい。
・人間は体の中に魔力がなくなると昏睡状態になるらしい。
・魔法には属性があって、火、水、土、風、光、闇の六種類と、その他すべてを含む無属性がある。回復魔法とかも無属性に含まれるが別で扱われることが多いんだとか。無属性は使える人が少ないので結構珍しいらしい。ていうか、使い方を知らないって人がほとんどなんだそう。
・各属性には適性みたいなんがあって、例えば火属性めっちゃ上手な人は水属性を使うとダメダメだってことがよくあるらしい。絶対じゃないっぽいけど。
・術者が死んだ場合、ある特殊な場合を除いてその術者が発動させた魔法は無効化されるらしい。
・魔物が存在する。他にも、ドラゴンとか諸々ファンタジーのお約束モンスターはだいたいいるっぽい。
とまあこんな感じ。
聞けば聞くほど最高の世界観じゃないか。かんたんに無双できるやつやん。
それからというもの、俺はとりあえず扱える魔力の量を増やしまくることに専念することにした。空気中の魔力を取り込んで(なんとなーくの感覚でやったらいけた。結構簡単っぽい。)、体の中で動かしまくる。ちょうど詰め放題の袋を広げるようなイメージで。
そんなこんなで七年が経過。母曰く、子供のうちから実際に魔法を使う練習をすると、場合によっちゃ魔力の使い方を間違えて狂死する可能性があるとかなんとか。だから最低でも魔法を使っていいのは十歳から。ただ、そんな簡単に使えるはずもなく、大体は途中で飽きてしまうので早い子でも十五歳になるまでは魔法なんか使えないらしい。普通の子なら。
俺は母に連れられて村の中にある森に面した広場に連れてこられた。
「さあ、早速魔法を使ってみましょう!一回やってみて!」
なんとまあ適当な教え方である。十歳児相手とは思えねえ。まあ、やるけど。
まずは、手のひらに体の中にある魔力を一部集める。で、火属性…は危なそうだから風属性にする。魔力を薄ーく圧縮して、風属性を与え、バーンって飛ばすイメージ。
スパッ、ドゴォォン!!!
俺が放った風の刃が木を一本切り倒した。あっやばっ強すぎたっぽい。魔力込めすぎたかな?
「ねえ、ユリウス?もしかして夢の中のおじさんに魔法も教えてもらったりした?」
「ううん、教えてもらってないよ!」
「ほんと!?(え、何その才能!?すごすぎるんですけど!っていうか私より上手い…)」
「ねえ、お手本見せてー。」
「え!?お手本!?」
マリア―――まずい。間違いなくこの子は天才。まさか五歳でここまでできるとは思ってなかった。
「えっとね、ユリウスの魔法はちょっと特殊みたいだからお母さんのお手本じゃあんまり役に立たないと思うの。もうちょっと大きくなったら王都に行ってユリウスのことを分かってくれる人にお手本を見せてもらおうね〜」
「うん、分かった!じゃあそれまでどうしてたらいいかな?」
「うーん…あ!じゃあ、お勉強なんてどう?計算とか歴史とか魔法理論とかをしっかりとお勉強するの。それだけ魔法が上手に使えるんなら他のことをしっかりと勉強してれば将来すっごく楽しく暮らせることになると思うの。」
むう…お勉強か…面倒だけど必要なことか。やって損はないでしょ。
「うん!わかった!しばらくお勉強頑張るね!」
「ユリウスはお利口さんね。じゃあお勉強しよっか。」
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