第182話 一行怪談182

 生まれたばかりの娘の顔が、数年前に私に付きまとっていた女とそっくりの顔をしており、その時、私は妻の正体を悟った。


 仕事から帰ると冷蔵庫の中の牛乳が腐ったものに入れ変わっており、彼氏はこういうイタズラをよくするとため息をついてから彼氏に電話をかけると、聞き慣れた着信音が押し入れから聞こえてきたのでおそるおそる襖を開けると、そこには血塗れで横たわる彼氏と、「おかえり」と笑う別れた夫がいた。


「死体はある意味、町の人たちの腹の中にあります」と微笑む男に、担当刑事は男が農場で豚を育てていること、ここ最近の男は町の人間に様々な豚料理を振る舞っていたことを思い出し、男が殺した死体は永遠に見つからないと絶望した。


「死ぬ時は酒を浴びるほど飲みたい」という夫の願いを叶えるために、浴槽に溜めた大量の酒に手足を縛った夫を沈める私は、夫の願いを叶えてあげるなんといい妻なのだろう。


 私を恨んでいる友人から毎年、私と家族の隠し撮りされた写真が貼られた年賀状が送られる。


 亡くなった叔父の遺品整理をしていたところ、大量の子どもの靴の中に、幼い頃に行方不明になった私の親友が履いていた靴を見つけ、叔父がなぜ、彼の家に私を連れていくのを頑なに拒んでいた理由がようやく分かった。


 近所に住む夫婦は長い間子どもができなかったが、先日、ようやく二人の間に子どもが生まれ、子どもを連れたその夫婦が我が家に挨拶に来たのだが、子どもの腕には父方の家系の男児に代々伝わるアザが浮かんでおり、そういえば最近の父は、ここの奥さんと一緒にいる姿を見かけることが多かった。


 昔の家族写真を見ると知らない少女が写っているので母に尋ねると、「その子は座敷わらしで、その子のおかげで私たちは裕福なのよ」と母は笑って返し、何の気なしに戸籍を調べるとどうやら私には姉がいたようなのだが、私が赤子の頃に死亡届が出されており、その日を境に我が家は金持ちになったようだったが、いつの頃からかその少女が泣き叫びながら黒服の男たちに連れていかれる夢を見るようになった。


 松葉杖をついた男性が物を落として困っているようだったのでそれを拾って渡してやると、「あなたは親切ですね」と笑顔を浮かべて去っていき、翌日、連続殺傷事件の犯人としてその男の顔がニュースに出ており、男は「親切にしない人間は生きる価値がないと思って」と供述していると言う。


 ある兄弟は好きな物は何でも半分こするのだが、同じ女の子を好きになった時は、その子を縦に半分にするのか横に半分にするのか、大いに揉めたと言う。


 

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