第142話 一行怪談142

 公園のブランコが全てひとりでに動いているので、今日は早めに帰らねば。


 妹のブラシは時々、ブラシについた髪の毛を咀嚼音を立てて貪っている。


 黄昏時に家の鏡を覗き込むと、鏡の中の自分がこの国の将来を話す。


 上映が終わった後に照明が付くと、観客全員の頭は爆ぜていた。


 玄関に置かれたブーツは夜中、タップダンスを踊るかのようにひとりでに動く。


 二日前に作ったカレーは、食べてみると何故かあの日の彼の肉の味がする。


 深夜の道路を走る、乗客も運転手もいないバス。


 酒を飲む父の背後で、ぎらぎらと目を輝かせている母の生き霊。


 パンフレットに載っている、存命の祖父の命日。


 姉の首筋から流れたのは、黄緑色のドロドロとした液体。

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