第44話 一行怪談44

 傘に当たる雨の音に混じって、「いつ? いつ死ぬの?」と問いかける子どもの無邪気な声が聞こえる。


 兄が作った胎児のぬいぐるみのおかげで私の子どもが怪我をするたびぬいぐるみが身代わりに壊れてくれるが、三十四回目のぬいぐるみの修理の時に「そろそろだから覚悟しろよ」と兄に告げられ腹部に残った傷が疼いた。


 弟のフリースローが百発百中なのは、弟の守護霊が必死にサポートしているからという理由であり、私だけが知っている。


 ジャスミンティーだけ飲むのは、それ以外の飲み物は膿の味がするからだ。


 流行りの曲を聞いているとどうも私の半生が歌詞にされているようで気味が悪くなってイヤホンを外すと、周りにいた人間が私を指さしてゲラゲラ笑いだした。


 資料をコピーすると、「明日の明け方、お迎えに上がります」という書いた覚えのない一文が浮かんでいた。


 足がダルいので湯船に浸かりながらマッサージしていると、真っ黒なもやが足から滲み出て湯に溶けて消えたので、その日以来、湯船には浸からないようにしている。


 新しいフェイスマスクを試してみると、マスクを外した時に顔の皮が一枚べろりと剥がれ、つるつるした肌に生まれ変わった。


 枕に1㎜ほどに切られた髪がびっしりとこびりついている。


 最近、誰かの視線を感じるのだが、勘違いではなかった。

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