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そこから60分のあいだに起こったことを、僕はことさら詳細に表現はしない。端的に、僕とベロはセックスをした。それだけのことだからだ。そこにはどんな種類の音楽も存在しなかったし、気の利いたセリフや意味のないジョークも存在しなかった。ただ純粋に、僕たちは服を脱ぎ、シャワーを浴び、セックスをした。
403号室について語るなら、左腕の言った通り申し分のない部屋――空調が効き、ベッドがあり、浴室がある、ごくごく普通のお部屋――だった。『208』と『209』が持つような双子的な宿命はここにはなかった。さらにベロの指定した60分は、これもセックスに費やすには申し分のない時間だった。一連の行為が終わり、頭の中の靄が晴れてくるころには、もう服を着てしまわなければならなかった。これはとても重要なことだった。
すべてが計ったかのように組み合わされていた。僕とベロはそれぞれがピースとなり、必要な部分にはめ込まれた。僕は初めて、肉体が意思から切り離された状態というものを体験した。それは空虚でありながら、得がたい快楽を僕にもたらした。セックスよりも何倍も。
ともかく、僕たちは世界の果てに行くための経由地点をうまく通過できたようだった。
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