私は逃げ道を見つけた

@Suicideboy

逃避

壁のある一点、ポツリと浮いた白い壁のシミを見つめる。


足をベッドに投げ出し、椅子に腰掛け、ただ何も考えず、ひたすらにシミを見つめ続ける。


この時、決して目を閉じてはいけない。


若しそのような愚行を取れば、目蓋の裏に、地獄が映し出される。


ただ呼吸と幾度かの瞬きに身を任せ、ゆらゆらと揺れる視界を受け入れるのだ。


きっとこれは、どんな薬物より、どんな酒よりも優れた快楽である。


周期的にピントの合わなくなる映像に神経を集中させ、脈動と共にゆぅら、ゆぅらと揺られる。


やがてピントが合わなくなり、目の前が白い壁に埋め尽くされた時。


私はゆっくりと目を閉じ、最後の眠りにつく。


私は逃げ道を見つけた。

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