第4話

「聖女マリア様、戻りました。

 玄米は高く小量しか買えませんでした。

 ライ麦を多めに買って、お家に置いてきました」


「ありがとう。

 何度も悪いけれど、これをまた売ってきてください。

 先ほどは玄米とライ麦と言いましたが、玄米がそれほど高いのなら、今度は大麦とライ麦を買ってきてください。

 大麦とライ麦は安いのですよね?」


「はい、分かりました。

 大丈夫でございます。

 大麦とライ麦は、玄米や小麦より安いです。

 こちらに小石を置かせていただきます」


「ありがとう。

 助かります。

 また同じようにして戻って来てくださいね」


 最初に鳥を売りに行った猟師が戻ってきた時、マリアは多くの鳥を落としていた。

 マリアは元々南の温かい所に住んでいたので、北の都市では玄米が珍しく高価だとは知らなかった。

 神殿から逃げ出し、街や村には寄らず、いきなり北のこの都市まで来て貧民街に入ったので、商店には入ったことがなかったのだ。


 だから買う穀物を大麦とライ麦に変え、さらに安いか猟師に確認したのだ。

 理由は簡単で、貧民街に入ってから自分が食べていたのが、大麦の粥とライ麦パンだったからだ。

 貧民街で食べているのだから、安いだろうと推測したのだった。

 推測通り、大麦とライ麦は安かった。

 そして猟師はマリアのいつけ通り、小石を大量に持って来てくれていた。


「聖女マリア様、ただいま戻りました。

 鳥を売ったお金で、玄米を少しとライ麦を買ってお家に置いておきました。

 子供達は痛みもなく安静にしておりました。

 子供達に食べさせるために、女達が玄米粥を作っておりました。

 小石はここに置かせていただきます」


 二人目の猟師は気が利いていて、子供達の様子も、買った玄米がどう使われているのかも説明した。

 気の利く男だと分かったマリアは確かめておくことにした。


「渡した鳥の中で、一番売値が安いのは何ですか?

 それを手助けしてくださった人達にふるまいたいのです。

 教えてください」


「ハトとカラスは、美味しく食べ応えがあるので結構いい値段で売れます。

 ヒヨドリとムクドリも美味しいのですが、小ぶりなので食べ応えがあまりなく、ハトとカラスに比べるとかなり安いです。

 なので一番小さいスズメが一番安いです」


「ではスズメを手伝ってくれた人達にふるまいますね。

 他の鳥は全部売ってきてください。

 私と孤児達と手伝いの人が、三日ほど食べられるだけの大麦とライ麦が買えたら、後はお金で持ち帰ってください。

 それとこちらに戻る時には小石をお願いしますね」


「分かりました。

 お任せください」


 

 

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