第12話

「生命神様にお祈りしましょう」


「はい、レオナルド様」


 私は、とても幸せでした。

 長年想い続けたレオナルド様と結ばれたのです。

 地位も名誉も失いましたが、その分義務と責任もなくなりました。

 王侯貴族の義務と責任は、なくなって初めて、どれほど私の重荷だったのか、よく分かりました。


 私はこのまま市井で生きていきたいと思ってしまいました。

 レオナルド様には悪いのですが、本心からそう思いました。

 レオナルド様と結ばれるまでは、どのような手段を使ってでもレオナルド様の名誉を回復し、国を取り戻そうと思っていたのですから、その変身ぶりには自分自身が驚くほどです。


 でも、分かって欲しいのです。

 それくらい、王侯貴族の義務と責任は重く苦しいのです。

 家臣領民の命と生活を背負うというのは、本当に苦しいモノなのです。

 責任感のある者にとっては。


 私にとって生命神殿の生活は、夢のように幸せなモノでした。

 レオナルド様と性欲に溺れる生活は、とても甘美なものでした。

 ソニー達も温かく見守ってくれています。

 神殿長以下の神殿関係者も、私達を祝福してくれています。

 私は、ずっとこの生活が続くように願い祈りました。

 そして……


「生命神様、どうか私に子をお授けください。

 レオナルド様の血を引く子を、どうかお授けください。

 どうか私達に子をお授けください」


 私の偽らざる願いです。

 心からの願いです。

 恨み辛みよりも、地位や名誉よりも、子供が欲しいです。

 レオナルド様の子供が欲しいのです。

 幸せな家庭を築きたいのです。


「生命神様。

 私の願いも同じです。

 ジェミーと私に子供をお授けください。

 ジェミーに健康をお授けください」


 恥ずかしながら、この後はお惚気合戦になってしまいました。

 心からの願いであることに間違いはありませんが、互いの健康と幸せを願い合い、子供が授かるように長く真剣に祈り願うのです。

 私達二人以外が聞けば、お惚気にしか聞こえません。

 ソニー達も生温かい視線を送っています。


 レオナルド様と私の願いは、直ぐに叶えられました。

 祈り願ったその夜に叶えられました。

 普通なら妊娠がはっきりするまで数カ月かかります。

 月のモノが正確な人であっても、ひと月はかかります。

 ですが、私には分かったのです。

 今確かにレオナルド様の種が私の胎に宿ったと!


「ソニー、私の身体にレオナルド様の種が宿りました。

 名誉を回復し、地位を取り返すのも大切ですが、大切な御子を無事に生み育てる事の方が、もっと大切です。

 私達が普通に暮らしていける道を教えてください」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る