第2話

「さて、今から取り調べを始める。

 最初に名門と自慢する卑怯な貴族たちに言っておくぞ!

 貴公らが先の大戦で裏切ろうとしていたことは、私も国王陛下もよく知っている。

 はらわたの煮えくり返る想いで、再寝返りを許したのだ。

 十年の雌伏でようやく王家王国も体制を立て直すことができた。

 貴公らが再度王家を謀って裏切ろうとしたら、王家直属軍を率いて討伐する。

 その時に先陣を切るのはアラン男爵だ!

 その事を肝に銘じて、嘘偽ることなく証言しろ。

 いいな!」


「「「「「はい!」」」」」


 これは、偽証で陥れられる可能性が高いかもしれません。

 ジョージ王太子が名門貴族たちを脅して真実を話さそうとしたという事は、未だ王家に貴族たちを討伐する力がない可能性があります。

 国王陛下も王太子殿下も、ここで私を助けられなければ、子煩悩で有名な父が国王陛下や王族を恩知らずと憎むこと間違いなしです。


 そこをポーターリントン王家が十年前の屈辱を忘れ、好条件で父を迎え入れると言えば、父も否やとは言わないでしょう。

 ストップフォード王家を攻撃しろと言われたら、多少は躊躇うかもしれませんが、中立を護れば本領安堵すると言われたら、私が王家に見殺しにされたのと同様に、父はストップフォード王家を見殺しにするでしょう。


 いえ、それではすませないですね。

 父は間違いなく先頭にたってストップフォード王家を攻め滅ぼします。

 ただし条件を付けるでしょうね。

 私を罠に嵌めた名門貴族たちの首を要求するでしょう。

 いえ、乱戦にして自ら名門貴族の首を獲ることでしょう。


 そう予想できたら腹が据わりました。

 ここで死ぬことになっても、父が敵をとってくれます。

 家も繁栄する事でしょう。

 私の死が父の躍進につながるのです。

 笑って死ぬことができます。


 ザワザワザワザワ


 名門貴族どもが何か小言で話しています。

 人がせっかく気分よくしていたのに、腐れ外道どもの声で台無しです。


「オリビア嬢。

 随分と不敵な笑いを浮かべているが、何か心に決めたことがあるのか?

 私の話は、君にとっては悪い話のはずだが?」


 私は意識せずに不敵な笑いを浮かべていたようです。

 それにしても、王太子殿下も自分の言ったことが役に立たない事を、理解されているようですね。

 それでも口にされたのには、なにか意味があるのでしょうか?

 まあいいです。

 腹が決まったら余計な事を考えずに断じて行うだけです。


「いえ、吉事でございます。

 これで父の自由を奪っていた鎖がなくなります。

 父はやっと自由になるのです。

 父は翼を得た虎のように雄飛することでしょう!」

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