28日目 退院前日・破(序破急の破)


「トーカさまには別の部署に移ってもらいます。最初の1日はいつものデスクに来てもらって、荷物をまとめてもらいます。」


 それはトー形の間では確実に聞いていた話だった。

「なあ、最近あいつみないけど、どうしたの?」

「ああ、あいつ、5階だよ……」

「5階!?なんてこった……」


 というような。


 いわば、社史を作る部署のようなものだ。

 首を切るための部署。

 死ぬものが集められる部署。


 そこで仕事をしている人はすぐ死ぬことが確定している人。

 それを周りが見たらどう思うか?


「いい加減にしろ、コノヤロー! クビにしといて、仕事まで取るのか!」

「とにかく、そういうことなので。あ、それから、診断書ないと通勤できないから、早急に準備してください。2日から勤務開始って言ってましたけど、2日は私が受け取りに行きます。それでOK出たら出社してOKです。だから最速で3日からです」


「勝手にしろコノヤロー!」


 なんだよ。



 状況が大きく変わってしまった。


 なぜトーカさんは仕事復帰にそれほど悩んでいたか?


 これでもトーカさんは義理堅い人なんだ。

 2週間やら、1か月やら休んだんだから、そのぶんがんばろう、迷惑かけたメンバーに恩返しをしよう。グループリーダに世話になった分、頑張って働こう。


 それでいきるトーカであった。


 それが、一切その人たちと関わりのない部署に飛ばされる。

 それこそ、本当に意味がないことであった。

 仕事をする意味がない。


 ・・・・…退院する、意味が、


 ない?



 とにかく、混乱していた。まさか俺が、あの部署に……

 っていうか、そんなやめる人専用の部署を作るとか、パワハラじゃないの?



 ちくしょう!



ゾクゾク




今日の暗闇のヤミ子さんコーナー


 トーカはラウンジの一番奥のスペースに座って、頭を抱えていた。

 ラウンジの入り口から、ジジイが能面の表情でこちらに近づいてくるのが見えた。おいおい、こっちくるんじゃねえだろうな。

 そう思ったら、まっすぐこっちへ歩いてきた。何?こんな場所に追い込むのか?やばすぎるだろ。

 椅子を持ってきて、座る気満々で、トーカのちょっと後ろあたりにきては、椅子で座り、トーカのiPadとトーカをこれまた能面のような表情でじっと見ているんだった。

 さすがに「なんなんすか(笑」と言っても黙っている。


「出た後はどうするんですか」

 知るかボケ


 前、「いやあ、生活保護のひとに百万円貸したら、帰ってこなくなりましてねえ」って自慢してたじゃん。はした金の100万。投資してくださいよって話しても苦笑い。うぜえな。自慢しといて。投資しろや



 とーかさんの性分だから、みんなでハブにしようよなんてのは違うと思うし。完全になつかれてしまった。タチ悪い…。


 でも今日一つチクっておいた。カッター持ち歩いてるから。だって怖いものはこわいじゃん!!


 で、暗闇のヤミ子さんって、誰?書いてたらそのうち、後ろから、「あたしよ」とか言いにくる系ですか?怖くないですか?今午前4時ですよ?あああ4時43分だあああきえええ

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