最終話29日目 トーカさん退院の日
そして退院の日です。
月末だからシメ的な意味もあって、かなりの数の人がこの日に集中して退院するんだ。
退院間近になって、親しくなった人もいる。お互い退院予定どうしだったり。
それで病棟も食堂も、空気がいつもと違っていた。
抱き合って泣いたり。何か手紙を渡す光景がみられたり。ありがとうね、頑張ろうね、という言葉も。卒業式のようだ。
卒業。
それは言い得て妙かもしれないな。別に深く考えないけどさ。そういう考えもあるのかもしれないな。
戻ってくる人もいるでしょう。それはそれで全然いいと思う。そういう場所なんだし。
でも、中と外ははっきりとわけなきゃいけない。
というか、分かれる。病院の中のことなんて、外の忙しさやストレスに、すぐ吹き飛ばされてしまうと思う。
実際、どれだけこれだけ仲が良かったとしても、結局、退院したら会う機会がなくて、皆、具合悪いということになって、自然消滅してしまうこともあった。彼ら彼女たちの電話番号は、いまだに携帯の中に残っている。どうしよう、ひさしぶりに・・・集まっても、忘れてるよ、なあ。
さて、この奇妙な日記を書き続け、とうとう退院の日を迎えたトーカさんは、今はどうしているかというと、
実はまだ、4階にいるのです。
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