18日目 トーカさんラーメンをたべる
とーかさんはBMIがついに危険域に達してしまった。
この現実に打ちのめされ打ち拉がれ打ち据えられたとうかさんは夜も間近な道道を血塗られた狼のように彷徨っていた。血塗れの狼は怨嗟の悲劇。天国の夫よ、妻よ、ああ、これが地獄の季節です。
などということを考えながら歩いていたら、それはタカラのような素晴らしいものを見つけた。
とうかさんは病棟の階段の扉を蹴り、中へおどりこむとラウンジに集まっているいつものデフォルトメンバに告げた。
「おいっ、きさまら、こんなところで油を売っていていいと思っているのか」
「何でぇ、そんなにあわてて、どうしたんでえ。」
「ラーメン屋だ。それも、半端な店じゃない。本格的なラーメン店だ。お前ら、食いたくないのか。ラーメンだぞ、ラーメン」
「ラ、ラーメンだと」
「てめえ、がせをぬかしてるんじゃねえだろうなあ」
「ガセだと・・・?」
「そうだ。この界隈は、さんざん探されてるんでえ。そこに、突然、ラーメン屋ができるわけがねえ・・・」
「できるわけがねえったって、あるものは、仕方あるめえ・・・。考えてみねえ。みろ、この写メを」
iPadで撮ったメニューと写真を見せる。
「刺身もあるぞ。餃子もありそうだ。焼売もある。定食の数がはんぱじゃない。これは相当な発見だろう。」
「さすがとーかさまだ!!!」
「神だ、神がおらっしゃる!!!」
ちなみに時代劇的口調は某忍者漫画。メンバーはなんとトーカさん以外女性である。以下の様子もそう。
そんなわけで、俺たちは遂に食の誘惑に負けた。
数日後、全員がロング外出の時間を少しずつずらしながら申請、取得した。10時から17時とか18時とかまでのがいしゅつを、いつも同じテーブルのぐるりをかこんでいるメンバーがいっせいに同じ日に長時間外に出たいというのだから、はっきりいって、ばればれである。
というか、明文規定はたぶんないが、そういう仲間同士で集まってどこかへ行くということは基本、禁止なことを先に書くべきだったな。
面倒を避けるためということが病院としてはあるのだろうけれど、やはり病人同士が集まると飲むか!となるわけ。事実なってるし。病棟の管理人も認識してるし。シチョウがそんなことを匂わせていた。
昼時だ。案の定、労働者が集まって混雑している。だけどこの時間にする必要があった。なぜなら、くったあと、次行くところがあるから。
皆、ラーメンやら、つけめんに目を輝かせていた。まさに、シャバの、長シャリ。周りの目なんか気にしている状況ではない。もはや皆、我を忘れて夢中で麺をすする。すげえなあと思いつつ、それを見ている。
とーかさんはなぜそれほどむちゅうにはならなかったのだろう?我を忘れるほどではなかったな。
その気持ちの元を探りに探って、掘り進めていけば、心配心だろうか。これで慎重なのがトーカさんだ。慎重かつ大胆に。
なんだかんだで、ウチ(病棟)の食事がよそよりうまいといったって、ごはんに味噌汁、清汁、青菜の炒め物といったもので、とりたててこれはすごいというものがあるわけではない。ただし日曜日は美味しいパスタだったり、バレンタインデーのようなイベントディには特別な包み焼きだったりしてくれるところはある。
で、とりたててすごい食べ物が毎日いただけるわけではない。そこに普通のラーメン屋のラーメンでこの感激。トーカさんはむしろ、このラーメン屋を見つけてよかったと。おいしいおいしいと感激する皆に感激した生。
え?なんでもない。
美味しそうにたべる人を見るのが幸せというが、よくわかる気がした。
さて、バス停行くぞ!!!!!
5人はちょうど到着したバスにおどりこんだ。
このバスの行き先は天国か地獄かはたまた!?
バスに乗り込み、わくわくとしながら僕たちは目的地へ向かった。
その時、電話が鳴った。職場からだった。
ゾクゾク
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