11日目 トーカさん、アジフライを食べさせられる
僕が病院近くの弁当屋に入ると、そこは荒々しい雰囲気。早く選べよ!おれのメンチカツまだかよ!
物流系の建物が多いエリアなんだから。どうやったって、力仕事の人たちが集まるし、トラックの運ちゃんだらけになる。駅前の煙草広場なんか、結構、がらは悪い。皆、うのつく座り方をしている。
それでうっかりそんな弁当屋に入ったものだから、ゆっくり様子を見ているわけにもいかず、ほらなにすんのあんた、うしろつかえてるでしょということになり、結局買わされたのが、アジフライ。この出来事、アジフライが、とーかさんをのちのち病棟で苦しめることになる。
とうかさん(前述の通り、俺、自分、私、僕、と=か、とーかさんは、トーカさんすべて同じ。)が病棟で過ごして10日。
病棟は比較的、平和だった。前回4年前、入院していた時は、患者の年齢層がかなり低く(高校生あたりまえ)動く、走る、喋る、笑う、加えてあたりまえだけど、病んでるから入院するのであって、それはカオスだった。
今回は年齢層は、高めだ。なだけに、落ち着いている雰囲気があり、あいつやってやる!的な人は少ない。色恋沙汰もたぶんそんなにない。男女比率2対8くらいだから。そりゃあもうどうやったって。
はっきり言ってこの病院、貧乏人は入れません。嘘ですけど。貧乏なら貧乏なほど、行政の援助が出て安くなる。収入がなければゼロになって、あれをごにょごにょすると、なんと入院するほどプラスになっちゃう。
今回は頑張ってお金作りました。母から受け継いだ着物とか、父が遺したホンダのバイクとか、質に入れて、泣く泣くお金を作りました。おかげで、こうして治療を受けることができています。お父さん、お母さん、ありがとう。夜はちゃんと眠る努力をするね。
さて、バレンタインデーです。
こんなもの、壊滅的でした。世の中にチョコは無い!!!
チョコよ死ね!!!!
でも麦チョコは許す
トーカの病棟はきれいに2つの勢力、派閥が成立していますね。しかし和平状態にあるようだ。ここでは暫定的に、トーカ所属?所属してるのか?近い派閥をエンライテンド、他方の落ち着いた派閥をレジスタンスと呼ぼう。
レジスタンスの活動はじつに落ち着いたものである。ずっと絵を書いたり、塗り絵的なことをしている。今もトーカさんの横のテーブルで本当に静かに作業をしている。話している内容も、入院前はひどかったが今はこれだけ前向きだ的な、建設的なものである。
いや、いや、果たして本当に塗り絵だろうか。本当にひとはこんなに毎日ぬり絵に勤しめるものだろうか。呪いのぬりえかもしれないぞ。
当陣営エンライテンドはそれにくらべ、やや好戦的だ。1人のリーダー格の女性を中心、というわけでもないようだけど、話が広がっていく傾向にある。ように見える。
そして何もいわず沈黙しながらぬり絵をしているレジスタンス軍に聴こえるように、挑発するような動きを見せているのである。こちらもひやひやしてしまう。
話す内容は・・・何、ということはないなあ。この近くにラーメン屋があるのかとか、ナースの態度が悪いとか、そういう話。
いや、実際、先日のシチョウじゃないけど、様子がおかしいナースというものはいるもので。
やたら甲高い声のナースがいるのだけど、先日、部屋のシーツ交換があって、部屋からしばらく出て。戻ると丁寧にスーツやシャツを、なんというか、「かける場所」にかけておいてくださってった。
そのナースがそれを見て、「アソコニカケルノハヤメテクダサイハソンシチャウカモシレマセンカラ」という音を出した。
ええ?と思って「いや、私かけたわけじゃないんですけどね」と言うと、「ワタシジャナイナラダレガ?」と音を出したんだけど、超嫌味っぽくないですか。「私ではありません」に対して「私じゃないなら誰」って、もう、うわあって感じ。
これを、一度顔を合わせるたびに、ひとつぶっこんでくる。トーカスァンだけかと思ったら、そうでもないようで。
あとは、近くのイオンとか、ヨーカドーとか、「1時間の外出で、行って、帰ってくるにはどんな手が考えられるか?」「ナースにさとられることなく、6人でロング外出してカラオケに行くことは可能か?」と、作戦が練られている。
さて、最近はトーカさんはその派閥争いから一歩引いてみて、第三勢力の一員として、テーブルからその様子を見ているのであるが、それは次の話として、とっておこう。
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