第22話
パパはボロボロになった海夏君を見て、抑えられないくらい大騒ぎ。病院に向かう途中も、病院に着いてからも、頭や足を至るところにぶつけた。
あの時のパパの慌てようー…重症なのはパパのほうでは?って思うくらい。でもね。
パパは何も聞かなかった。あたしたちー…ううん。海夏君に事情を無理矢理聞こうとはしなかった。ただ、怪我の心配は目に取るようにわかっただけで。
「いつでも力になるからな」
腕をぶら下げるかたちで包帯巻き姿を見て一言だけ呟いた。
「ありがとうー…ございます」
海夏君はー…語尾を少し震わせながら、もう家族だと言うのに何処か遠慮気味だった。
そんな海夏君を、パパは静かに目尻に皺を寄せ微笑みながら、自分の体に片手で繰り寄せ、その肩を二度叩いたのだった。
余裕なパパとは違って、あたしは。
「ご、ごごごごめんね。まさか、本当に骨折してるだなんて……!」
あたしが、とどめを刺してしまったのかもしれない……。
病院帰りに謝り続けただけでは足りないのではと、夜眠れず今日も謝ろうと今海夏君の部屋の前にいるのです。
海夏君は昨日許してくれたけど、だけど……!あたしが……とどめを刺さなければ、骨のひびだけですんだのかもしれない……!!そしたら、完治も一ヶ月とはならなかったのかもしれないし……!!
ふわりは深呼吸をして扉を恐る恐る叩いた。
「か、海夏君! 朝からごめんね、やっぱりもう一回謝りたくて……ちょっと今いいかな?」
……………………。
寝てる……のかな?
……………………。
物音1つないし、寝てる……よね?し、失礼します……。
ふわりは扉に押し付け耳をすました。
昨日の今日だ。ふわりの脳内に昨日の出来事が浮かんで来て、胸騒ぎがしていっきに不安が込み上げてくる。
「まさかー…」
仕事に出掛けるパパとは会ったが、そういえば海夏君とはまだ会っていなかったような。
「海夏君、開けるね?」
扉を開けるとー…綺麗に整理整頓され、所々日常品が欠けたシンプルな部屋があった。そして、机の上には置き手紙らしいものが置かれていた。
『ちょっと出掛けて来る。海夏より』と書かれていた。
昨日の今日だよ……? いったい何処へ……?
大丈夫。そんなはずはない。
だけどー…だけど、もし。あたしの嫌な考えが本当だったら……。
そう思うと、あたしは紙を握りしめながら家を飛び出した。
行かないで……お願い。まだ怪我も治ってない。片腕もまともに使えない、あんな状態で。行っちゃ駄目だよッ……。
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