水溜りの先に

かのこ

水溜りの先に

雨上がりの午後。空は明るいが、やや陽は傾き始め影が伸びている。もうすぐやってくる夕暮れに背中を押されて自宅へ向かって歩いていると、道路を挟んだ向かいの道におそらく3、4歳ぐらいの女の子とお母さんが手をつないで歩いていました。ピンク色のスニーカーと紺色のワンピースが可愛らしい。寒い時期なのでモコモコな上着とマフラーをつけていました。

お母さんもニコニコ笑って、順調に歩いていると思っていたその時、娘さん、お母さんの手を振り解き、最近古い家を取り壊し土の地面を剥き出しに更地になった土地にできた水溜りにボチャン。その可愛らしいスニーカーで思い切りジャンプして、見事水溜りに着地しました。

あーららら

お母さん、呆然と娘さんの無邪気な姿を見ています。娘さんはとても楽しそうに笑顔で水溜りを蹴って遊んでいます。

お母さんの心中お察しします。

ご自宅までどのぐらいの距離かは知らないし、もしかしたら途中どこかによる予定があったかもしれない。寒い中ぐちょぐちょの靴で家まで歩いてくれるだろうか。抱っこしてって言われちゃったりしないだろうか。

怒るのかなぁ?

なんて思ってみていましたが、お母さん怒る様子もなく、娘さんの手を引いて水溜りから出させると、一言二言何かを聞いて、娘さんがうなづくとまた手を繋いで歩き始めました。

ああ言う時って、洗濯の手間や濡れて風邪引くんじゃないかとか考えるとついつい怒っちゃいそうですけど、怒らないって言うこともあるんですね。素敵。

娘さんのあの楽しそうな笑顔を見たら怒るに怒れないですよね。無邪気に水溜りで遊ぶなんて、子供の時にしかできないし。濡れたり汚れたりって考えると水溜りは当然避けますし、何より周囲の視線がものすごく気になります。遊べるはずなんてない。周りになんて見られるかとか後のことも考えずに気持ちのままに行動しちゃうんでしょうね。何せ靴が濡れたと言うのにあの素敵な笑顔。楽しそう。

怒らなかったあのお母さんのためにも、お子さんの靴が早く乾いてくれたらいいな。

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