ユア・センカーと密室の島
鍋島小骨
ホテルうみねこ
こないだお母さんが、なつかしー! とか言いながら観てた何とかロワイアルって映画、クラスで無人島に送り込まれてじゃあ殺し合いをしてもらいまーす、とか言われてマジで殺し合うやつ。あれを思い出している。間が悪い。思い出さない方がよかった。でも思い出してしまったので取り消しができない。
大丈夫、違う要素がたくさんある。同じではない、絶対に。まず私たちはクラスで来てるんじゃなく班だ。修学旅行の選択コースで五人かける二班の十人で来ただけ。しかもここは無人島じゃない。私たちが泊まる『ホテルうみねこ』が営業していて従業員はここに住んでるし本土との定期便もある。私たちは眠らされて
いや、でも。
これは、殺し合ってはいないだけというか。
一人一人殺され待ちさせられてるだけというか。
修学旅行とかダルいねアハハとか言った時にお母さんが割と本気で、行きたくないなら休む? と返してきたあの言葉に乗っておくんだった。家にいればお姉ちゃんの世話を手伝わなきゃならないけどそれだけで済んだ。
でも来てしまった、そしてこの密室から逃げられない。
たった一人の『
* * *
こんな都市伝説がある。
十八才未満の子供の集団が時折、世間から隔絶された環境に置かれ、その全員からわずかずつの魔力を一人に集めて
でもそんなのはただの都市伝説に過ぎない。
だって魔法界はいつも何て言ってる?
我々魔法使いは世界の元素と関わり世界を支える重要な働きをしているが、人間どもときたらただ生きて死んでいくだけ――そう言って私たち人間を見下し、俗世の裏側に閉じ籠もって人間を寄せ付けずに生きている。そんな奴らが、寄せ集めまでして人間を不自然な魔法使いもどきに仕立て、自分たちの世界に迎えるはずがない。
たまに変わり者の魔法使いが特定の人間の
だから、どうせ適当な話。
出所も曖昧、何をどうして魔力を寄せ集めるかも一切出てこない、ただの与太話。
そう思っていたのに。
それなのに。
この選別は、魔法界主導で定期的に世界各地で行われています。
やり方としては、同じ歳の子供たちを結界に入れ、魔法圧を増しながら生き残りが一人になるまで待つ。圧に負けて仮死した敗者全員の
ということなので安心してください選別に敗れて死んでもそれは結界の中での限定的な死、仮死ですから後できちんと無傷で元の世界に帰れます、魔法を得た生き残り以外の皆さんはね。
『ホテルうみねこ』のオーナー
その時にはもう窓の外に広がる世界は黒紫の天に蓋をされ、『ホテルうみねこ』は現世から隔絶された密室になっていた。……多分。
映画と違って仲間と殺し合うことはない一方、協力し合うこともできない。スマホの電波もないしWi-Fiもないからだ。そして自分の部屋から廊下に出ても他の宿泊室のドアはない。
誰にも会えないのだ。クラスメイトにも、ホテルの従業員にさえ。
しんと静まり返ったホテルは急に狭くなったような広くなったような変な感じがした。
私もそこそこどうかしてる方だから、最初は部屋にあった靴べら、途中からは物置部屋で見つけたスコップを構えてホテル中を探したが、厨房のドアもトイレのドアも洗濯室のドアもあるのに宿泊室や従業員居室のドアはないし屋外に出るドアもない。ロビーにあったメインエントランスはただの
ついでにチェックしたが電話もネットも通じてないしテレビもラジオも受信できない。
そして無人。
どうやら私たちは、全員が一人ずつこの密室で孤立しているらしい。
というかこんなの、繊細な子なら半日でパニクって自殺キメる可能性もあると思う。
順次行われる選抜に落ちて死んだらしき子の死体がロビーに増えていくからだ。天井からロープで吊るされた姿で。
それが、外せない。
これは、神経の細い子はやられるよ。私は何でまだ正気なんだろう? だって昨日まで鬼のような量LINEしてた親友の
私、本当はもう気が狂っているんだろうか?
どう思う?
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