第十一話 現実世界の観察者達(後半)
【エルリーゼの正体】
エルリーゼは本物の聖女ではない。
赤子の頃に手違いでエテルナと取り違えられてしまっただけの一般人であり、当然彼女に魔女を倒す力など備わっていなかった。
年を取らない理由は主人公が制御出来るようにと吸い取った魔女の力によるもので、これによって彼女は外見が変わらなくなっている。
だが実際にはこれが原因で寿命が縮まってしまっていた。
魔女の力を浄化出来た理由は、この時に得た魔女の力を使っていただけであり、剣を素手で止めたのは単純に膨大な魔力でガードしていただけである。
しかし彼女のあまりにも完成された聖女としての振舞いから、彼女を偽物と思う者は魔女を含めて誰もいなかった。
だがエルリーゼ本人はその事を知っていたらしく、いつの日か本物の聖女であるエテルナに聖女の座を返す日の為に邁進していた事を明かしている。
【本編での活躍】
・エルリーゼルート
四年越しのまさかの発見。
彼女のルートに入る方法は、『CG回収を100%にした状態で』、『周回プレイをせずに一周目をプレイして』ゲーム開始時に自動で入手出来るアクセサリの『思い出のペンダント』をゲーム開始からここまで一度も外す事なく、学園に入ってから十七日目の夜まで全ての自由行動を自主練で消費する事である。
(正確には全ヒロインの好感度を上げない事)
そうすると十七日目の夜に低確率で、友達を作らない主人公の事を心配したエルリーゼが主人公の部屋を訪れ、彼女の好感度を上げる事が可能になる。
(このイベントを踏まないと何をしても攻略可能キャラにならず、好感度そのものが一切表示されない)
有志の検証の結果、エルリーゼが部屋を訪れる確率は0.3%前後というデータが出ている。
筋トレばかりしていると心なしか確率が上がるという情報もあるが、こちらは未検証。
なので十七日目の夜まで自主トレをして過ごし、夜の自主トレをする前にデータをセーブして、後はロードを繰り返そう。
その後は十八日の夜に、ファラによって主人公とエテルナ、フィオラ、ジョン(それとモブが数人)が誘拐されるイベントが発生する。
そしてファラによって護衛を付けずに来るように要求され、その通りに本当に一人で来てしまう。
ここで、彼女を仕留める為にファラが差し向けた魔物達と戦闘に入るのだが、この戦闘は何とエルリーゼを操作してのイベントバトル。
この戦闘で初めてプレイヤーに数値として明かされる彼女の凄まじい戦闘力は必見。
他のルートでもイベントで圧倒的な強さは見せていたが、このステータスならば納得である。
本来ならば二周目でようやく倒せるようになるレベルのモンスター三十体と連戦になるが、その全てを一方的に蹴散らしてくれる。
何をどう間違えてもまず負ける事はない。
そしてこのイベントをクリアすると、その二日後にまさかの転入生として学園に転入してくる。
追記・修正求む。
ここまでで終わりか。
以前までと比べて大分変わっているな。
前までは偽聖女って事は別に隠されていなかったのに、今ではネタバレに配慮した仕様になっている。
それだけプレイヤーの間での重要度が増したっていう事だろうか。
試しに画像検索をしてみると、以前より圧倒的にエルリーゼのイラストが増えている。
俺の知るエルリーゼではあり得ない事だ。
勿論改変前でもエルリーゼ(ピザ)のイラストは描かれていたが、そんなに多くなかったし……何より、イラストの半分はボコボコにされているようなものだった。
その際のコメントは『クソリーゼざまあwww』とか『いいぞもっとやれ』とか、そんなのばかりだ。
間違えてもこんな、可愛らしく描かれるようなキャラクターではない。
二次創作も結構多いな。
元々『永遠の散花』の二次創作は多かったが……見た事のないエルリーゼヒロイン系の二次創作がやけに増えている。
とりあえず、二次創作サイトの更新順で一番上に来ている奴でもちょっと見てみようか。
タイトルは……ほーん? 造花の守護者?
どんな感じなんやろ。
―――――――――――――――――
造花の守護者 作:神龍闇王
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―1―全ての始まり
俺の名前は神龍闇王。
平凡な高校生だ。ただ自分ではよく分からないが女達は俺を見るとキャーキャー騒ぐ俺はどうやらすごくイケメンらしい。
スポーツ万濃で成績もいつも一番でいじめられっ子を助けて苛めっ子をボコボコにするくらいの事しかしていないがそれでも俺は皆の人気者である。
俺は気が付いたら・・・見知らぬ平原に立っていた・・・間違いないここは永遠の散火の世界だ。
ならば俺は――この世界のふざけた運命をぶっこわしてエルリーゼを守る為に戦おう。
だから俺は死に物狂いでしゅぎょうした。そして世界の誰よりも強くなった。
強くなった俺はさっそく聖女の城へと向かった。
すると「誰だお前は!?」邪魔な騎士が行く手を阻んだので俺はそいつらを蹴散らして先に進んだ。
「うわー」兵士達は俺が手を降っただけで飛んで行った。やれやれ、手加減してやったのにこの程度か。
次に国の王様がやってきたが俺は知っているこいつの悪行と世界の真実を。こいつはここで死ぬべきだ。
「黙れ」と言って俺は国王の首をはねた。
そして俺はエルリーゼの部屋に入った。「誰ですか?」エルリーゼは言った。
「俺は君を守りに来た物だ」そう言って俺はエルリーゼの頭を撫でた。
「私を守りに・・・・・・?/////(この胸のときめきは何? 恋?)」何故かエルリーゼは顔を赤くした。どうしたのだろう???
これが俺と彼女の出会い――永遠のちる花の世界に来てしまった俺は一体何を思い・・・何を為すのか・・・。
―――――――――――――――――
俺は無言でそっ閉じした。
え……何? こいつの中での俺は見知らぬやべー不法侵入者に頭を撫でられただけで警戒心も抱かずにそいつに惚れるような奴なの?
ないわー。マジないわー。
しかも作者名と主人公名が同じってお前……。
というか何で一人称形式なのにエルリーゼの心の声出てるの? 読心能力でもあるの?
何かもう、他のSSを見る気が失せてしまった。
永遠の散花についてのスレに行くと、エルリーゼについてあれこれ語られ、盛り上がっていた。
『エルリーゼ様マジ聖女』とか『本物より本物してる』とか、『転校してきた所まで進めた』とか……うーん。
誤解させるように演技してるのは俺なんだが、流石にこういうの見ると何か複雑な気分になる。
けどまあ、どうしようもないか。
スレに出て行って真実を教えても頭おかしい奴としか思われないだろうし……そのままガワだけ偽聖女に騙されていてくれ。
でもオカズにするのは勘弁な。鳥肌立つから。
しかしこいつ等本当にこれでいいのかね?
その偽聖女、中身
そんな奴のルートなんか入っても何もいい事はないって。
絶対最後で期待を裏切られる。期待をボコボコにされて蹴り飛ばされてゴミ箱に詰められる。
俺が言うんだから間違いない。
やめとけやめとけ。
……と、またしても視界が白く歪んできた。
さっきまで立っていたのに気付けばまた浮遊して自分を見下ろしてるし、夢とはいえ視界の切り替えに脈絡なさすぎだろ。
はあー……仕方ねえな。そんじゃまあ、そろそろ起きるとしますか。
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