壊れた男は異世界で嗤う
はるる
第1話
「やっと...やっとだ、これで日本へ帰ることが出来る。」
アキトは目の前にぼろぼろの状態で倒れている魔王ジャックを見ながらそう呟いた。
「魔王を倒すのに5年もかかってしまった。だが、そんなことはもうどうでもいい。王との約束であれば帰還するための術式が魔王を倒したことで使用できるようになってるはずだ、あとは王都へ帰るだけだな。」
「だが、少し休んでからにしよう魔力もほとんど使い切っておまけに装備も使い物にならなくなってしまったしな。」
そういいながら悲しそうな顔をして根元から折れてしまった愛剣を片手でなでていた。
「あ、忘れてた討伐成功の信号を送らなくちゃ。」
足元に置いてあったカバンの中から魔道具を取り出し魔力を送り込む。
「これで全部終わりだな、知らせを受けたら騎士団が迎えに来てくれる予定だから少し横になろう。攻撃を受けすぎたなポーションも使い切ってしまったから安静にするしかないか。」
どさっ、と全身を投げ出すように大の字に寝転んだ。
数十分後
ガチャ、ガチャ、ガチャと大きな音と足跡を立てながら騎士団の集団はアキトのもとへと到着した。
「アキト殿、アキト殿起きてください。王都へ帰還しましょう。」
騎士団長であるべリスが代表してアキトに声をかけた
「んん、あーよく寝た、体の痛みもだいぶ落ち着いてきたな。それよりもべリスずいぶんと早く着いたんだね。」
騎士団長は苦笑しながら
「本当は、私たちもアキト殿と一緒に戦いたかったのですが無理について行っても足手まといになるだけですので、せめて戦いが終わった後にすぐ駆け付けられるように準備していたのです。」
「そうか、心配させてしまったようだな。だが安心しろ魔王の恐怖は消えた。これで国の人々が平和に暮らしていくことが出来るだろう。」
「はい!モンスターはまだ残っていますが倒しつくすのも時間の問題でしょう。立ち話もこのくらいにして馬車へ乗って下さい。」
べリスに催促されて馬車へと身を移した。
ガタゴトガタゴト
少し揺れる馬車で男2人とむさくるしい中王都へ向けて帰還していた。
「べリス、俺は魔王の討伐が終わったから予定通り日本への帰還術式で帰ろうと思う。」
「な!なぜですか!!アキト殿この世界にいれば地位も名誉も思うがままだというのに。それに人々にはアキト殿という英雄が必要です!どうか考え直してはくれませんか。」
べリスは驚いたように発言し最後には頭を下げてお願いし始めてしまった。
「あ。頭を上げてくれ!もともとこの世界に来た時から決めていたことなんだ。すまない。」
「いいえ!あげません!私はアキト殿が帰らないというまで絶対にあげません。」
「ど、どうして」
「アキト様!もうすぐ王都へ着きます!!」
アキトはべリスの反応に違和感を覚えたが、外から騎士団員の呼ぶ声がして考えるのをやめてしまった。
「くっ、もう時間がないというのに」
べリスはアキトに聞こえないくらいの小さな声でつぶやいた。
「やっと着いたか、あともう少しで日本に帰れるな。ほんとうに今まで長かったな。」
日本への思いを募らせるアキトはこの後起きる出来事を予想できずにいた。
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