第32話 謁見の間
建物の中に入って1分は経っただろうか、いや、そこまでは経ってないかもしれない。それくらいの時間がたったのだが、今俺らはでかい扉の前にいた。
「むっちゃでかいやんけ……」
そこにあった扉は、4、5メートルほどの高さははありそうな鉄の扉である。なんか開けたら王様が居たり、魔王が勇者を待ち構えていたりしそうな感じだ。
「いやー、なんかいきなりすごい扉を見つけてしまった」
ついさきほど建物の中に入ったばかりなのだが、もうなんかすごそうな部屋の前ににたどり着いてしまった。割と入り口の近くにあるものなのかと思ったが、よく考えてみると入り口からというか崩れたところから入ったのだから、入ってすぐにこんなところにというのもそこまでおかしくはないかもしれない。
そんなわけでこの扉を開けてみようとしたのだが。
「うーん……重い!」
鍵がかかっている感はしないのだが、力強く押しても人一人が通れる隙間もできない。扉が重い上にさび付いていたりしているせいで、ほんのわずかしか動かない。なんでこんなバカでかい扉なんか作ったのか、設計者とか建築家とかに問い詰めたい気分である。
「あ、じゃあ私が魔法かけてあげるから……」
「いや、ここは俺1人の力で……くわばらぁぁ!」
意味不明な言葉をだしながらも全力を出して扉を全力で押す。まったく動かないわけではなさそうだし、自分の力だけで行けるはずである。ここで何でも魔法だよりではなくいざというときは色々できる男であることを証明しなければ。
今自分の中に持っているすべての力を振り絞り、扉を押し続ける。すると、さっきまでほとんど動かなかった扉がギシギシと音をたてながら開いていく。
俺は力を加えるのをやめた。
「ふう……ま、俺にかかればこんなもんよ……いてて」
腰に手を当ててドヤ顔をしようと思ったのだが、腰に手を当てて痛がることになってしまった。かっこつけて少し無理してしまったが、まだ完全に体の痛みがなくなったわけではないことを忘れていた。収まっていた痛みがまた少し表面に出てくる。
「えっと、痛みとかは大丈夫なの?」
「大丈夫よ大丈夫。それよりも中に入ろう!」
「う、うん」
開けたといっても人1人ギリギリ入れるほどの隙間を作っただけなので、そんなに大きなスペースはないのだが、完全に開けようとしたら文字通り骨が折れそうだし、人が通れる隙間ができれば十分だろう。
その隙間から中へと入っていく。中に入って真っ先に目に入ったのは、部屋の一番奥。少し所に置かれている椅子だった。
椅子は大理石か何かでできているのだろうか。いかにも偉い人が座りそうな椅子だ。というか、ここが宮殿とかお城とかなら、あんな椅子に座るのは王様とかだろう。他の所に目を向けると、地面にレッドカーペットが敷かれていたり、壁に豪華なランプがついていたりと装飾も豪華だ。ここは王様とかがいる接見室なのかもしれない。
「うーん……なんかいかにも王様とかが居そうな部屋だな」
「おーさま……すっごい偉い人のことだよね」
「そそ。ここはその偉い人がいる場所だったのかな」
中央奥のでかい椅子に王が座り、横には女王とか王子が、左右には親衛隊が……みたいな。部屋の構造や装飾なんかがそんな印象を与えてくる。やはりここは王のいる間なのだろう。
しかし、天井が吹き抜けになっているのは元からなのだろうか。瓦礫はあまり落ちていないが、天井の感じから恐らく爆撃か経年劣化で天井に穴が開いたのだと思うが。そうなると国王とかはどうなってしまったのだろうか……どっちにしろ今はもう死んでしまったと思うが。
何か他に面白そうなものはないかと思い、部屋の奥へと進んでいく。
「うーん……きたね」
遠くから見ると結構荘厳な感じが近くで見るとやっぱりボロイ。埃はあんまりついていないみたいだが、なんかいろんな汚れが付いたりしている。ただ、椅子に掛けているところとかは見られない。イスの素材は大理石みたいで、特別な装飾はない、背もたれが結構高いシンプルな感じのイスだ。ただ、ごちゃごちゃしているよりかはこんな感じでシンプルな感じの方がかえっていいのかもしれない。
王が座っていた椅子とかちょっと座ってみたいなと思ったが、この汚れ具合だと座ったら今着ている制服にも汚れがついてしまいそうだ。座るのを少し戸惑ってしまう。
が、やっぱり座ってみたい。まあ着ている制服も割と汚れが付いているし、さらに汚れたところであんまり気にする必要はないかもしれない。そんなわけで恐る恐る椅子へと座ってみる。
「ふむ……あーひんやり……」
石のひんやりとした感覚が体に伝わってくる。なんか座っているだけで偉くなった気分である。尻が痛くなりそうだからあんまり長く座りたくはないが。
「イヤーなんかいいなあこの椅子……よし、我はこの……いや、やめとこ……」
「……?」
我はこの国を治める王であるとか言おうと思ったが、ふと考えてみるとメチャクチャ恥ずかしいことなので言うのをやめる。
その様子を見ていたアンジェラが不思議そうな顔をしている。そんな顔で見てもまた言ったりとかはしないぞ。
「……とにかく、あーその……あっちの扉の方行ってみましょう!」
「うん、わかった」
このままだとなんか突っ込まれるなり質問されるなりしそうなので、その前にこっちから話して何か言われないようにする。ちょうど部屋の側面にも扉があったので、そっちに行こうと提案してそらすことにした。この部屋にもまだ何かあるかもしれないが、そっちの扉の方に行ってからもう一度見ればいいだろう。椅子から離れ、そちらの方へ行くことにした。
////////////
何とか更新できた……これからも失踪せずに何とか書いていきたいと思います。
感想、評価等していただけると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます