第19話 地下室
隠し扉が開いて出現した空間は結構狭いものだと思っていたが、スマホで照らしてみるとここは部屋というよりも隠し階段の入り口のようなところだった。らせん階段は下へと続いていた。窓などはなく、暗い空間が続いている。
「この階段結構長いな……」
市長室は3階にあったのだが、感覚的はもう地上1階は通り過ぎているような気がする。
スマホのライトで照らしながら階段を下りていく。階段は鉄製で腐食などはしていないみたいだったが、それでも一段一段下りるたびに金属が出す甲高い音がこの狭い空間に響き渡る。足取りが自然と慎重なものになってしまう。結構一段一段の段差が急なので、アンジェラが少し降りにくそうにしている。
「よ、よいしょ、よっと……」
「大丈夫? もっとゆっくり降りたほうがいい?」
「大丈夫。ほら、あと少しみたいだし」
「んあ、ホントだ……っと」
ようやく階段を下りきったころには、おそらく地下1階か2階あたりのところまで下りたような気がする。
人1人が通るのでギリギリなほどの狭い階段を下りた先には、これまたかなり狭い廊下が待っていた。階段よりかは広いが、それでも人2人が何とか並べる程度の広さだ。天井も低く、多分1m80cm程度なのではないだろうか。材質は建物と変わらずコンクリートみたいなので、頭とかをぶつけたら普通に痛いだろう。
「ここら辺は思っているよりもきれいだな」
他の建物と変わらず経年劣化でぼろくはなってはいるが、それでも今まで見た中では一番きれいな方だった。
ここの廊下から見るにいくつかの扉があるみたいなので、とりあえず一番近くにあった扉を開けることにした。その扉は金属製で物々しい雰囲気を出しているが、鍵はかかっていないみたいなので、鉄製の扉を少し踏ん張りながら開けると、今度は鉄格子の扉があった。が、こちらも鍵はかかっていないみたいだ。
「いや、セキュリティーガバガバやんけ」
2つ目の扉を開けながら俺はそういった。いくら扉や壁が頑丈だからって鍵をかけていなかったら何の意味ももたないのではないか、中に誰もいるわけではないし……
と思っていたら、どうやらこの中に人がいたみたいである。深緑色の迷彩服と、迷彩服と同じような色のヘルメットを装備している人だ。最も、今は骸骨となってしまっているが。
「ええ、ここにも骸骨あるやんけ! とりあえず合掌……いや、服装がなんか軍人さんぽいから敬礼の方がいいのかな、でも俺民間人だし……」
「けーれーってがっしょーと何か違うの?」
「敬礼は特定の職業の人たちが使っている挨拶とかの動作だよ。じゃあ……よくわからんけど敬礼でいいや、敬礼!」
右手をおでこのあたりに当てて、遺体に対して敬礼をするその様子を見ていた彼女も俺と同じように敬礼をした。
「よし……じゃあさっそくなんか漁ってみよ。すいません祟るのとかはやめてくださいねぇ」
先ほどの市長室と同じように、故人の目の前で色々と色々と物色するという罰が当たりそうなことをしていく。
といってもこの部屋はかなり整理されているみたいで、ロッカーみたいなのがいくつか並んでいるくらいだった。こちらには鍵がかかっているみたいで開けることはできないようだが、小さくて丸い穴が多く空いているので、この中を見ることができそうだ。
というわけでスマホのライトをそのロッカーの中へと当てながら覗いてみると、中に鉄と木で作られた道具がいくつもしまわれているのが確認できた。
「これは……完璧に銃だな」
この中にはマシンガンやライフルが置いてある。銃の知識はそこまであるわけではないが、ここに置いてある銃は第1次世界大戦とか第2次世界大戦のころに使われているような古い火器のような気がする。
「銃がおいてあるってことは……ここは武器庫なのか」
「銃って昔戦争するのにつかわれた武器なんだよね? どんなものなんだろう……」
「うーん、魔法の方が強いんでない? いやでもどうなんだろう、銃火器の方が扱いやすいのか……」
実際の戦場を見たわけでもないし、そこのところは分からなかった。ここには結構多くあるので、戦争の時に一定の地位は占めているのではないか。
「ユウト、ここにある銃って使えるの?」
「いや無理かなぁ。俺ハワイで親父に教わったこともないし、あとここにカギがかかっているみたいだし……」
入り口はあんなガバガバだったのに、ここにはしっかりと南京錠で鍵がかかっているみたいだった。試しにロッカーを開けてみようとするが、ガチャガチャと音をたてるだけで開く気配はなかった。
たとえ鍵を外すことができたとしてもこんなの扱える自信ないし、50年もたっているのなら銃弾の方もダメになっているのではないか。そんなわけでこの銃を使うのは無理そうなので、おとなしく諦める。この部屋にはほかには特記するものはなかったので、他に何もしないで部屋を後にした。
////////////
感想、評価等していただけると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます