第10話 街の探索

「本当に滅んでいるんだな……」


太陽がまだまだ沈まんと、雲の上で踏ん張っている中、街へ入った後の第一声がそれだった。

建物は中世ヨーロッパみたいな感じだが、電柱から延びる電線が建物へと延びていたり、電灯みたいなのがそこかしこにあったりと、近代化の波がこの街にも到来していたみたいだ。

だが今やこの街には人も動物もいない。代わりにシダといった植物が至る所に生えていたり、建物が崩れていたりと廃れた雰囲気を醸し出していた。

今までも廃墟と化した屋敷を見たり、全く手入れされていない道を見たりとしたが、かつて数千人ほどは住んでいたであろう街が廃墟になっているのを見て、やはり文明は滅びてしまったのだということを実感した。

今は自転車から降りて、手で押しながら周囲を見ているところだった。

アンジェラは隣で歩いている。俺とは違ってきょろきょろと見ていたりとかはしていない。こんな光景に慣れているのだろ。まあ、この子が生まれたときにはすでに世界は滅びていたのだから、当然か。


「ここの街は……意外と大きいみたいだな」

「うーん、そうだね。入る前に見たときももっと奥の方にいっぱい建物があったと思うし」


今は街の通りを通っているのだが、3階建てか4階建ての石製の建物が軒を連ねている。恐らく崩壊前は結構な数の人たちが住んでいたことだろう。

シダやコケに覆われた街。だが一応、街についたことには変わりない。

とりあえず街についたからにはさっそく……


「……何をすればいいんだろうか」


滅びる前とかであれば街についたらこの世界の情報を集めるなりする必要があると思うのだが、もう完全に滅びた街で俺はいったい何をすればいいのだろうか。


「じゃあ、さっそくやらないと」

「え、何を」

「えーっと、食料を集めたり、何か使えそうなものを探したりとか」

「なるほど……」


この子の年齢は自転車をこいでいるところで聞いたが、正確にはわからないけど10歳ぐらいだといっていた。ロリババアとかじゃなく、リアルロリだった。

だが年齢は関係ない。俺は異世界歴2、3時間だが、この子は10年ほどだ。この子は異世界先住民で、この世界に関する様々な知識や知恵を持っているだろう。俺とは圧倒的経験の差がある。もう月とすっぽんぐらい違うだろう。

これから、この子の教えを乞う必要がありそうだ。


「では、ご指導のほどよろしくお願いしますパイセン」

「パイセン?……よくわかんないけど、わかった」


かくして、この廃墟と化した町の探索が始まったのだった。




あの後、アンジェラと一緒に街の探索を行ったものの、たいしたものは見つからなかった。家具やら雑貨やらは至る所にあったが、それも錆びていたり腐っていたり、ボロボロになっていたりと散々なものだ。

アンジェラは何よりも食料を見つけるのが大事だと教えてくれた。食事は生命活動の維持に必要不可欠なので、それくらいは俺にもわかる。建物の中などを探した結果、瓶に入ったパスタみたいな乾麺と、缶詰を少し見つけた。せいぜい3、4人分ぐらいの量だが、これでも悪くはない収穫みたいだ。

それと川も見つけたいといっていたが、これはすぐに見つかった。街の中心部を流れるようにある川は、幅5mほどのものだったが、清流といっても差し支えないほどの透明度だった。まるで水道水がそのまま流れているみたいだ。文明が滅びたんだから環境汚染とかも発生していないのだろうか。

彼女はごくごくと美味しそうに飲んでいたので俺も飲んでみたが、普通においしかった。まるでスイスから取り寄せた天然水を飲んでいるみたいだった。今まで1度も飲んだことはないけど。

しかし、直にのんでしまって大丈夫なのかが気になる。一度過熱してから飲む必要があるだとか、サバイバル関係の本とかで見たような気がするが。あまり多く飲まなければ大丈夫だろうか……

それともう1つ。尿意を催し、トイレに行ってくると彼女に言ったらトイレットペーパーとスコップを渡されそうになった。当たり前の話だが、水道も止まっているのだからトイレが使えない以上、そこらで済ますしかない。

大きい方じゃないからいらないといったが、いずれ使うことになると思う。トイレットペーパーはちゃんとあるんだなと思ったが、保存状態のいいやつを見つけて拾っているそうだ。紙を切らしたときは木の葉っぱを使ったり、川の水で洗ったりとかしているらしい。

トイレットペーパーはできるだけ優先して見つけようと、俺は思った。


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