第5話 異世界って?
「……それほんと?」
「うん……50年ぐらい前にすごい大きな戦いがあって、そのせいで滅んだらしいよ。私もよく知らないんだけど……」
「オーマイゴシゴシ……」
余りの衝撃に、思わず錆び取り研磨剤の名を口走ってしまった。
この子が言うことが本当ならば、人類はとうの昔に滅んでしまったみたいだ。嘘を言っているようには見えない。どうやら俺はすでにほろんだ世界に召喚されてしまったみたいだ。なんてこったい。
しかし、もしそうなのならばいったい誰が俺をこの世界へとよんだというのだろうか。すでに滅びた世界だというのなら、俺がこの世界へと召喚された理由が分からない。そもそも俺を召喚することができる人が居ないのだから。
まさか神とかが娯楽のためにこんな世界へといざなったとでもいうのだろうか。もしそうなら許せん。
「……ねぇ、ちょっと聞いていい?」
色々と考えにふけっていると、ふいに彼女が質問を飛ばしてきた。
「ん、ああどうぞ」
「えっと、今までこの世界が滅びたってのを知らなかったってこと?」
「え、まあ、そうだけど……」
「何で知らなかったの?」
確かにそうだ。自分が世界が滅びているというのを知らなかったということは、彼女にとっては不思議なことに決まっている。その理由は異世界から来たからなのだが……
「えーっと、まあそれにはちょっとした理由があるんだけど……」
「どんな理由? 今までずっと外に出ていなかったから?」
「いやそういう訳じゃ……いやまあまだこの屋敷から出たことはないけどそういうことではない、けど……」
「じゃあなんで?」
「え、えっとそれは……」
彼女は俺にぐいぐいと聞いてくる。興味を持ったことの関心が絶えないのだろうか。
しかし、俺はこの質問になんて答えればいいのだろうか。異世界から来たということを正直に明かすべきなのだろうか。それとも隠すべきか……
(……まあ、別に打ち明けてもいいか)
隠したところで特に何も得することはないだろう。ここは正直に打ち明けることにした。
「まあ正直なこと言うと僕異世界人なんで、この世界のことよくわかんないんすよ」
腕を組み、妙に堂々としながら異世界人であることを打ち明ける。
この子はわかってくれるだろうか。それとも精神的に大変なことになってしまった人だと思われるだろうか。
「……えーと。その、イセカイってなに?」
「うわ、そうきたか」
帰ってきた反応は予想外のものだった。よくよく考えてみると、この子が異世界とは何か知っているとは思えない。ラノベや小説は読んでなさそうだし、そもそも異世界という概念自体この世界に存在するのだろうか。俺は多分魔法か何かでこの世界へと召喚されたと思うので異世界という概念はあると思うのだが、この子はそれを知らないのかもしれない。
「えっとー異世界ってのは自分たちがいるこの世界から別のところ、パラレルワールドとかとは区別されるんだけど、あー……説明しづらい!」
頭の中ではなんとなくわかっているのだが、口で説明するとなるとかなり難しい。どうやって説明するべきなのか、色々と考える。
「……よくわからないけど、別の星から来たってこと?」
俺がどうゆう風に説明するべきかを考えている間に、彼女はそう言ってきた。
「いや、僕は異星人とかじゃなくて……いやでも、ここが異世界ではなくて地球から離れた遠い星の可能性もあるのか……まあ間違いではないし、そーゆーことでいっか!」
半場諦めたような感じで彼女の考えを認めた。異星人だろうが異世界人だろうが、その違いはさしたるものではないだろう。どっちにしろここに召喚されてきたというのは事実だし、別の星から来たというのも間違いではない。詳しく説明するのも面倒なので、そういうことにしとこう。
「えっと、じゃあ宇宙人さん。なんでこんなところにいるの?」
「いやそれはこっちが知りたいよ、なんで異世界に召喚されて神様もお姫様もいないのか」
ここは神様からチート能力もらったりお姫様から勇者様だと呼ばれたりするところだだろうが。それなのに、お姫様どころか文明崩壊で色々終わっている世界という。マジで何でこんな世界に来てしまったのだろうか。
「あー、今頃剣と魔法のファンタジー世界に召喚されて色々やっていたはずなのに……」
召喚されたというのなら、その世界でチート能力とかを発揮して俺TUEEEEE的な感じで無双してハーレム作ってといろいろして……と、そんなことをやりたかったというのに。
テンプレといえばテンプレだが、そのテンプレにあこがれている男が1人、ここにいる。俺はこの世界を嘆き、そして落胆した。
「えーっと。私、剣は使えないけど魔法なら少し使えるよ」
「マヂでぇ!?」
彼女の一言に、思わずグイっと顔を近づける。魔法陣みたいなのは部屋にあったし魔法で俺がここに来た理由は魔法で呼ばれたと思っていたのだが、やっぱりあるのか。この世界も捨てたものではないかもしれない。
「魔法とか使えるの!?」
「あ、え、うん……」
俺の並々ならぬ様子を見て少し引いているような表情を浮かべているが、そんなことはどうでもいい。まずは魔法を見せろ、話はそれからだ。
「今見せてほしいなーなんて」
「ええ、えっと……じゃあ、少しなら」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
彼女に向けて何回もお辞儀をする。
アンジェラは俺の行為に結構戸惑っているみたいだが、それでも披露する意思はあるみたいだった。とてつもなく楽しみである。
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