主人公の二人が、ピアノと言う共通点を通して、少しずつ近しくなっていく過程には、意気投合したり、ぶつかり合ったり……、青春のひとときを生き生きと過ごしている様が印象的なストーリーでした。また、細かい描写、ピアノ演奏の臨場感は、時に鬼気迫るものがあります。読み終わった後も、この若い二人の未来にワクワクドキドキが止まりません。クラシック好きな方も、そうではない方にも是非、読んでいただきたい物語です。
クラシック音楽を何倍にも楽しめる、とはまさにこのこと。演奏者の心と、受け取る側の心と、さらにこの小説を読む側の心と、すべて楽しめます。さらに言えば、どう楽しむかも読み手次第といいますか、そのための上手な隙間というか空白さえも心地よい小説です。楽曲に関しても、深く取り組まれていてクラシックファンにはたまりませんし、ちょっとクラシックに興味がある、という人も紹介されている楽曲を聴くことで世界を広がられるのではないでしょうか。