第38話『完成! リルルの(かわいさ)最強装備』

「おはようございます。アイテムの受け取りにきました」



「鍛冶師さん、服飾師さん、おはようございますっ!」



「あらあ、リルルちゃんおはよう。今日もかわいいわね」



「リルルちゃんおはようさん。コボルトダガー作ったぜぇ!」



 サラッと俺の挨拶を無視したな!

 まあ、顔を見ればからかいなのだとは分かるが。

 まったく……この二人は。



「早速試着室へ行って頂戴。あと、サービスにコボルトダガーを納めるためのケースも作っておいてあげたわ。リルルちゃんには特別に無償にしてあげるわよ」



「ありがとうございますっ」



 リルルは、服飾師のエルフのお姉さんに試着室に連れられて、

 試着室で新しい衣装に着替えて戻ってきた。




「レイ。……どうですか? 似合いますか?」



「超かわいい!! 想像以上に似合っているぜ!!」



 俺は上から視姦……いや、観察する。



 なんというか、一言でいうとかわいいな。

 いや、かわいいのは元からなのだが。

 かわいいものはかわいい。

 うん、かわいい。



 さすがは王都一の鍛冶師と服飾師だ。

 リルルのその魅力をあますことなく、

 究極のレベルに昇華している。

 


 もともとの素材の良さに甘んじることなく、

 その素材の良さを活かす最高の調理をしてくれている。

 素晴らしい……いや、素晴らしすぎる!!

 


 餅は餅屋。信じる者は救われる。

 俺は邪神の4Kアイズでリルルをガン見した。

 さすがは邪神の瞳、髪の質感がハンパない。



 まずは髪だ。金色に風になびく髪が美しい。

 エメラルドのような薄緑色の瞳も美しい。

 唇も、リップでも塗っているのかというくらいに潤っている。



 いやいや待て待て!

 ……これは服とか靴とは一切、関係ない。

 視線を下に移すぞ。



 おお……。"海龍神の革"の色味を活かしつつも、

 綺麗に染色している。


 この色は前世の世界だと"ティファニー・ブルー"と呼ばれる色だな。

 緑と青が混じり合った淡い色でありながらも、

 どことなく高貴な感じが漂っている。



 そして、胸の部分も……グレイトォ!!

 改めて見ると大きいな。



 サラシのように圧迫せずに、

 なおかつ露骨に主張をさせ過ぎもしない。

 完璧なバランスだ。



 冒険者の服という差別化が難しいテーマにも関わらず、

 この服飾師は期待以上の逸品を仕上げてきている。

 さすがは王都一だ。



 ところどころに白いアクセントを加える事で、

 色が単調にならずに上品に仕上がっている。



 更に視線を下におろしてみよう。



 ウェストは程よくくびれている。

 アレだけ毎日いっぱい食べているのに太らないのは凄い。

 羨ましい限りである。



「リルル、コボルトダガーをみたいから後ろに振り返ってくれるか?」



「はいっ」



 リルルはくるりと回り、俺に背中を見せる。

 新しいコボルトダガーが納められているこの鞘も素晴らしい。

 これも"海神龍の革"で作られたダガーの鞘か。


 これも薄めのティファニー・ブルーで可愛らしい鞘だ。

 その鞘の先にチラリと顔を覗かせる『コボルト』の装飾。


 これは服飾師が一番力を入れたところらしいが……。

 なるほど、素晴らしい。


 可愛らしいのだが、ただ可愛らしいだけでなく強そうでもある。

 この絶妙なデザインは匠の技と言えるだろう。


 角度によって七色に光る装飾も綺麗だ。

 七色に変わるとは言っても目を凝らさないと分からない程度の上品なモノだ。


 ビックリ○ンシールのホロカードのようなクッキリ分かる

 感じではなく色の境目が分からない虹色を思わせるグラデーション。


 なるほど、これがデザインか素晴らしい。

 すくなくとも地元のジャスコには売っていなかった色彩の服だ。


 どーでもいい事なのだけど、なぜかーちゃんは中学の頃にドクロの

 ちゃっちいプラスチックメタルの装飾が付いた服をよく買ってきたのであろうか。

 かーちゃんのセンスは謎だ。



 ……そんなことはどうでも良い。

 俺がリルルを後ろに振り向かせた理由はコボルトダガーを

 見るというのはあくまで建前。


 本当の目的は――ホットパンツを凝視するためだ。

 俺は更に視線を下に下げる。



「おおふっ!……イッツア・ワンダフル・ワールド!」



「なんですか?」



「すまない。古代ルーン語で、素晴らしい衣装の服だという言葉だ」



「勉強になります」



 いや、このホットパンツ凄いな。

 しっかりとお尻に2個ポケットが付いている。

 しかもボタン付きで実用性も高い。


 そして、微妙にヒップのラインが見えているのが素晴らしい。

 分かっている。この服飾師はだ。

 そして長さは二部丈。


 下着が見えそうだけどしっかり隠れる

 ちょうどいいあんばいの至高の丈だ。

 そしていちばん重要な点のチェックだ。



「……うーん。これは、マーベラスッ!!」



「古代ルーン語ですねっ」



「そうだ」



 二部丈の下の部分が、リルルの太ももに"少しだけ食い込んでいる"

 この"少しだけ"というのが重要なのだ。

 あんまり食い込んでいると痛そうだからな。


 更には、ホットパンツの下の肌色の空間を楽しんだと思ったら……。

 俺は、思わずエルフの服飾師と硬く握手をした。


 白い薄手の膝より上のニーハイソックスがそこにあった。

 いわゆる絶対領域だ。

 この服飾師、何者だ? もしかして転生者か?



「服飾師さん、このニーハイソックスの白と、黒をあるだけ用意してくれ」



「追加料金。金貨50枚になりますが宜しいですか?」



「構わない――ここにあるだけの在庫を持ってくるのだ!」



 俺がそう疑うほどに分かっているデザインを熟知していた。

 確かにこれだけの腕前なら金貨5000枚。

 本来は5億円と言われても納得のいく値付けだ。

 これは、もはや芸術と言っていい。


 更に下に目を下げるとそこには、これも素晴らしいエンジニアブーツ。

 デザインは至って一般的なデザインであるがところどころに

 配置されている金具の配置が神掛かっている。



 その靴底で踏まれてみたい。

 いや、本気で踏まれると死ぬかもだが。


 カカト、靴底、ツマ先のプレートは、

 ミスリル、アダマンタイト、オリハルコンの合金か。


 魔力伝導率を劇的に高めるそうだから、

 実戦でどんな感じか確かめよう。



 恥ずかしそうにリルルが言う。


「レイ、似合っていましたでしょうか?」


「完璧以上の完璧、超完璧だ! 鍛冶師さん、服飾師さん素晴らしい腕を披露していただきありがとうございました! これでリルルも安全に冒険ができます!」



「ふふ。良いのよ。それにしても、靴も服も6着ずつなんて珍しいオーダーだった、けど、その分とても楽しくお仕事させてもらったわ。今後の新作の服を作る時の構想が溢れて止まらないくらいに刺激的な体験だったわ!」



「ははっ。俺のとこなんてコボルトダガーを12本も作ったぜ! おかげさまで、希少金属のオリハルコンやアダマンタイトの加工方法は完全に理解できるようになった。そして、ミスリルの特性もより一層理解が深まったぜ。その点については感謝しているぜ! あとは性能の件だが、実戦で試してみてくれ」



 その後、新しい服を着ながら王都の街を散歩した。

 いつもと同じように夕暮れの王都の街並みは美しい。


 夜と、昼の入り交じる黄昏時の時間帯。

 夜のくらさと昼の明るさが入り交じる束の間の時間。

 この瞬間の煌めきが俺はなんとも言えずに好きだ。



 地平の先から差し込む夕暮れの光が眩しかった。

 そして、俺の隣にいるその光に照らされたリルルの

 楽しそうに笑っている横顔をみたら頑張って買ってよかったと思えた。



「それじゃ、約束どおり鍛冶師のお勧めの隠れ名店に行こう」



「なんのお店なのですか?」



「肉と海産物が最高に美味しいお店なんだとさ」



「それは、最高ですね!」



「ちょっと高いお店なのだが、その分雰囲気があって良い感じらしい。店内で音楽が流れているらしいぞ。あとシャンパンも美味しいらしいぞ。リルルはおお酒飲めたっけ?」



「とても弱いですが、今日はレイと一緒に一杯だけ飲ませていただきますっ!」



「それじゃあ。今日は、装備完成記念の打ち上げだー!」



 リルルはお酒に弱いせいか食前酒を飲んだだけでヘロヘロになっていた。

 だけど、その後出てきたステーキとバカデカイ海老とカニの山、

 茹でポテトは完食していた。ほうれん草のバターソテーも残さず完食だ。


 そして、食べ終わるとスースー寝息を立てて寝てしまった。

 朦朧としながらも、しっかりと残さず食べる姿勢はさすがリルルだ。



「ふふん。リルルめ、幸せそうな顔で寝てやがるな」



 俺は、リルルを宿屋のリルルの部屋のベッドに

 寝かせ毛布を欠けたあと、部屋を出た。



 その後俺は自室に戻り、コボルトダガー12本、

 服6着、靴6足、高級ニーハイソックス多数を、

 全て朝までに限界突破させるため、



 死ぬほど気合を入れて合成しまくった。

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