むらさき
紅葡萄
一、 少女時代
何度、「女はお嫁に行くものだから」と父親に言われたかわからない。
家督を継ぎ自分たちの面倒も将来に渡って見てもらわなければならない、所謂【位牌持ち】の兄ならばいざ知らず、女として生まれた私は特別勉強ができなくても怒られなかったし、それこそ運動なんて以ての外だった。お嫁に行く大事な体に、傷でもついたら大変だと、球遊びも木登りも許してはもらえなかった。
勉強については、幼心から物事を覚えて父親に自慢すると、少し複雑そうな顔で「お前は賢いね」と言う。
どうして兄のときのように喜んでくれないのだろうと、私は何度も頭を捻ったものだ。
私は将来、嫁いだ先の家を守る妻として、最低限の教養を身につけていれば良くて、そもそもそれ以上のことを望まれてすらいなかったのだ。
それでも私は物語が好きで、勉強が好きだった。ふと気がつけば寝るところがなくなってしまうほど、枕元には書物が溢れていた。
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