第27話 王までの道・5〜王の最後〜
俺が王になる準備は遂に整った……。いや、まさかこんな形で準備が整うなんて予想外だけど……。
俺の体から発するオーラ『王の威光』は所謂、洗脳魔法で、影響を受けた人間に限らず動物も此処一週間は、俺の威光により恐れ慄く事になる。
どんな恐怖かって? いや、実はこの魔法は発動する瞬間に植え付ける恐怖を操作する事が出来るんだが……今回は、ただ黙らせる為だけに使ったからな……多分……今までの人生で感じられなかった凄まじい恐怖だと思う……。
で、俺の威光の影響を受けていないとはいえ、目の前でその光景を見た、レグ王子と側近のメイドと執事は、今俺に口が出せないでいる……。
ま、逆らったら殺すと言わんばかりの殺意を撒き散らしてたら、そりゃそうなるのも当然か。
という訳で俺は今! 無言で何か言いたそうに突っ立っている三人を前に! 国王候補の座に座ってる訳よ! フハハハハ!
そう思っていると漸くレグ王子が口を開く。
「……君はこれからどうするつもりなんだい? 君のやった事は結果的に全ての問題を解決したとは言え、それに合わさって国民の怒りは凄まじい……」
「んーまぁ、とりあえず、この候補の座からじわじわと支配圏を手に入れ、最後に国王をぶっ潰そうかなって思ってる」
「……! ふざけないでくれ! 良くも、その国王の息子の前でそんな事が言えるな!」
すまねぇが俺にそんな生易しい気持ちはこれっぽっちも無え! もっと追い討ちを掛けてやろう……。
「それでぇ、今この国は色んな所からの交易や外交ルートは遮断されているが、まだ不完全だ。全ての一切の物を受け付けない国とし、更に底辺まで落ちた国民から俺は全てを奪い追い討ちを掛ける……。そんでとりあえず飢饉ブームでも作っちゃおうかな!」
「ブームって……君って人は……!」
へっ、自分から飢餓を作り出すってこんなヤベェ国王は他にいねぇだろうな……。
んでんなヤベェ事言ったら、次はメイドが口を開く。
「いい加減にしなさい! 今ずく、これを辞めて、今すぐこの国から出て行け!」
あー五月蝿え……俺さぁ……この異世界に転生して最初もそうだったけど、俺の意思に反抗する奴、更に意味の分からねえ事をほざく奴、大嫌いなんだよねぇ……。
まぁ前までは強大な力を持って、何もかもも吹っ飛ばしていたが……これより俺は、戦慄の王と名乗ろう……。今その力を見せつけてやる……。
さて、ちょっと格好つけて言ってみるか……。
『王の威光』
「我は戦慄の王なり! 口答えする者、逆らう者には苦しみを! 逃げる者、裏切る者には死を! 我が声を聞いた者は今、我が下に平伏せ! 貴様らには自由は無いッ!」
「あぐッ! くっ……ああ"あ"あ"……!」
頭がかち割れるような痛みだろ? だって今、俺の洗脳魔法は、最大限の力で発動したからな!
もはやそれは洗脳では無い、完全なる記憶の植え付けだぁ……。全ての記憶を脳から完全に消去し、俺に従うという、服従しか考えられなくなる!
「姉さん! 大丈夫か!」
って此処でまさかのレグ王子のメイドは執事の姉だと分かるううう。
「おい! 流石に身内への攻撃は許さないぞ!」
あれ……? 身内? まさかレグ王子は執事の兄で、この三人兄弟だったのかー……ふーん。まぁ、どうでも良いけど……。
あーいや、半分洗脳で許してやるか……俺を敵対視する兄弟を下に付かせるって面白くね?
「はい、ストップぅ! いやぁ、あとちょっとでメイドさん完全洗脳されてたわぁ……」
「くっ……頭痛が治った……? な、何を……?」
「良し、えーとレグルスだけ知ってるけど、執事とメイド……何て名前だ?」
「俺はオネスト……姉はアリアだ……」
って事は……本当に兄弟としたら、オネスト・アファブレとアリア・あ、アファ……になるんだよな? うん。言いにくいッ!
んなわけで……後は、やる事やったら王様ぶっ殺せば遂に完了だぁ……。
────────────────
俺が次期王になってから3ヶ月後、外からの易を完全遮断された王国は、金や資源、食料が底を尽き、次期王による自然環境の操作で、畑もまともに耕せない……。凡ゆる枯渇。大飢饉にまみれた。
餓死、飢えに苦しみどうか生き延びる為に、国外へ逃げようとも、俺の分身で作った兵士が問答無用に殺す。
また凡ゆる手段、信号弾や焚き火、音による外部への連絡方法も見つけ次第静止、やろうとした者は処刑。
完全なる支配圏の出来上がりだぁ……。
「おい、レグ王子……いやレグルス。遂にこの時が来たぜ?」
「な、なんだ……。これ以上に一体何をするつもりだ……」
これから言う言葉と行動は、今まで起こした事より最も最悪最低の行為だろう。大量虐殺、大飢饉も確かに酷いが……それでも立ち上がれる者は多数いる。しかし! それぞれの絆を断ち切る事は?
立ち上がった者に殺し合いをさせる事は? ま、そんなつまらねぇ事やらねぇけど……俺がやる事は……。
「レグルス、王を殺せ。いや、実の親父を殺せ……」
「は? 何を言い出すのかと思えば、そんな事を僕が、はいわかりましたなんて言う筈が無いだろう?」
「言わねえよなぁ……なんならこれならどうだ?」
『
如何なる命令でも相手の意思を無視して、その行動を絶対成功させる。完全支配魔法……。更に、命令を果たした相手は……脳への強制負荷により、精神崩壊と脳の限界酷使で死に至る……。
「……なッ!!? か、体が……勝手に!!」
だからもう俺にそれ以上逆らう事は出来ねぇ……自分の手で、今この国で最も邪魔な国王を殺し、俺の理想を完成させてくれ……。
なんて言ったら? 勇者的存在が、「させるか!」とか言ってきそうだけど、居ないんだよなぁ……。
これってあれだよな。最悪のバッドエンド。一切の抵抗を許されず、敵の思うままに、主人公自らの手で物語を終わらせる!
うわぁ、俺悪魔だわー、鬼だわー。
「じゃ、俺もお前が王を殺すのを目の前で見てやるから、行くぞ?」
「止めろ……止めてくれッ!」
国王前・・・・・・・・・・・・・
「おぉ……レグルスか……。ゴホッゴホ……何故、儂は気付かなかったのだ……政府機関を壊滅させ、街一つを一撃で吹き飛ばす最上の恐ろしさを……」
「お父さん……」
「ただただ強いというだけで信頼し……最早我が国の……抑止力になるだろうと……そう思っていた……だが今を見よ……抑止力になるどころか……我々が抑止されている……はっはっは……笑い物だ……」
「くっ……」
「レグルスよ……? 何故刃を出している……」
「申し訳ありません……僕は貴方を殺さなくてはならなくなってしまいました……」
「顔が悲しい……刃も震えている……そういう事か……もう我々が抵抗する事さえも出来ないという事か……」
「本当にごめんなさい……ごめんなさい……少しも抗う事が出来なくて……」
「良いのだ……もういい……儂が死んで、いずれお前さえも死のうとも……我々魂は、此処に残り続ける。ならば儂はいつまでもお前を、この国の民を、此処で見守るとしよう……。さぁ、安心して、儂を殺せ……息子よ……」
「くっ……うわあああああああ!!!!」
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