第21話 チートに制限なんて無い

 さて、時空改変を使った事で冒険者ランクSSSになっちまった俺。


 因みにこの時空改変は、政府機関の中で起こった事だけであって、政府機関に関わっていない人間達には、一切影響は無く、俺がSSSランク冒険者タグを首に掛けている事に凄まじい違和感しか感じないという事になる。


 そんな異常な違和感に一番早く気づいたのは、冒険者ギルドの受付人だった。


「ってええええええ!?!? 最上さん! まさかSSSランク冒険者からタグを強奪したんですか!?」


「ちげぇよ! 政府機関潰して来ちゃった☆」


「は……? それで何故SSSランク冒険者タグを?」


「だから俺はもうSSSランク冒険者なんだよ。時空改変魔法を使って、『俺は元からSSSランク冒険者』という事に塗り替えた。そして、政府関係者すべての人の記憶も改竄」


「…………そんな魔法ありませんよ……聞いた事も無いです。何でもかんでも○○魔法ってつければ良いって訳じゃ無いんですよ? てかそれどう見てもチートですよね?」


「チートですが何か?」


「いや、もう良いです。それで? これからどうするんですか?」


 んなもん決まってんだろ! Lランクだよ! Lランク!


「Lランク冒険者の試験を受けたい」


「……チートは使わないで下さいよ?」


「大丈夫! 時空改変はもうやらないから! ははは!」


「『時空改変は』ってそれ以上のチートがあるんですか?」


「良いか? チートってのは、所謂、不正行為なんだよ。んで、俺は無意識にそのチートを起こせる訳。そりゃもうやろうとすれば何でもな!」


「………分かりました。それではこれよりLランク昇格試験の説明をします。良く聞いてて下さいね?」


 ざっと説明してこんな感じ。


1.試験中は、今まで手に入れた武器、防具、レベルをすべて一時的に初期化し、自動ステータスアップスキルも無効化される。


2.試験合格条件は、Lランク昇格試験の為に用意された最高難易度クエストを完了する事。


3.試験中は、ギブアップかクリアするまで、如何なる方法であっても初期状態から戻す事は出来ない。(ステータスアップ魔法も上限が設定される)


4.昇格試験は、ソロ限定。外部からの物品受け渡しや通信も無効化、遮断される。


 以上! 普通に考えたら鬼畜過ぎる試験である。


 なるほどねぇ……こりゃ誰も受けようと思わない訳だ……。


「余裕〜マジで? これ簡単過ぎね?」


「調子に乗るのは今のうちですよっ」


 良いだろう! 真のチートを見せてやろう!(ニヤリ)


 Lランク昇格試験開始・・・・・・


 うっはぁ、本当に全部初期化されてやがる……だが……


概念初期化リセットボタン!』


 この魔法は自身の身体だけに影響があり、周囲には一切の影響無く、全ての強化弱化、凡ゆる物を初期化する魔法。


 しかし! 俺にはそもそもレベルという概念が無く、初期化しても今のようなLランク昇格試験で初期化されたステータスを、俺が異世界転生した当時に戻すだけであって、初期化=最強なのである!


「ふぃ〜力が戻ってくるぜ〜。さて、これでこの昇格試験も楽勝だな!」


 昇格試験で受ける専用クエストの詳細は、またしても竜の巣と同じ様な理由で長年放置されていた幻の竜の撃破。即ち幻竜と呼ばれているらしい。


 幻竜の強さは、SSSランク冒険者が100人向かっても一切歯が立たないくらいの強さの様だ。一応言うが、一般的にSSSランク冒険者が街から受ける評価は、『最早化け物』だそうで、ソロでドラゴン3匹くらいなら倒せると言う。


 そして因みにLランク冒険者の評価は『極めすぎて腐った奴』だそうだ。てか街のみんなの評価毎回酷くね? 普通なら『真の力を極めし者』とか言って欲しいわぁ……。


 ま! 実際の俺自身を俺が評価すると『不正行為チート野郎』なんだけどな!


「さて、サクッと倒しに行きますか!」


 ここら辺だよなぁ……?


 そこは左右に標高の高い滑らかな斜面の山が二つ、正面に手前に大きく尖った山とその後ろは天高く反り上がった山がある。


 上から見れば十字型に連なる山脈に見えるだろう。まるでそこに巨大な生き物の化石があるかの様に。


「幻竜さん出ておいでー! 一緒に遊びましょー!」


 すると俺の予想は最悪な事に100%一致していた。正面の山が突然動き出し、左右の山が地面との接着点を破壊しながら、巨大な翼の様に広がる。


 でけえええええええ!!!


 『最後の物語』に出て来るア○マンタ○マイかよ!! いや、山と一体化してる時点で正にそれじゃねぇか!!


『我が眠りを妨げる者は貴様か……』


 喋ったあああああ!!?


『我は幻竜クレモスなり……我が眠りを妨げるなら……』


「うるせえええええ! 鼓膜やぶれるわぁ!」


ゴッドの怒り《キャノン》』


 鼓膜が破れる程のでかい声をかき消す為に、両手から超巨大なビームを放つ。


 だが何という事だ。用意に俺のビームを弾きやがった。


 すると、完全敵意剥き出しの俺に幻竜は、今度こそ鼓膜が破れる程に咆哮する。


 グアアアアアッ!!


 へぇ〜やるじゃん。良いだろう、なら次の一撃で終わらせてやろう。


『時空ポータル!!』


 幻竜の頭上に身体すっぽり収まる程の巨大なポータルを開く。


『これは……貴様……! 何を……!』


 ドラゴンは困惑の言葉を発し終える事なくポータルに飲み込まれ、消滅。


 ね? 一撃で終わったでしょ? どんな力を持っても勝てないなんて言うんだったら、存在ごと消滅させて仕舞えば良いじゃないか。ドラゴンは元から此処にはいなかった。そして幻竜なんて存在しない。


 あー時空改変使わないって言ったけど、こりゃ実質過去改変しちゃってるじゃん。


 だってこの一撃で、俺が政府に『俺は元々SSSランク冒険者だった』と思わせたように事実を書き換えたんじゃなくて、『幻竜とは架空の生物である』とまんま歴史ごと改変しちまった訳だから、簡単に言えばタイムパラドックスを起こした事になる。


 最高だねぇ! チートやめられないよ!!


 さて、クエスト終えてこれから帰る訳だけど、なんて反応されるか楽しみだ。


 どう言う事かと言うと、この時点で『倒せなかった竜を倒す』というクエストは実質消滅し、俺は『存在もしない敵を狩りに行った』という事になる。


 つまり、今冒険者ギルドに帰った所で、受付の人は『お帰りなさい』とだけ言うだろう……。


 って全部わかってんじゃねぇか!


 だめだ……これじゃあ、分かりきった反応を見に行くだけで全然つまらない。


 ならもっと過去をぐちゃぐちゃに……


時空弄パラドックスボックスり』


 えーと、これをこうして……これをこうすればこうなるから……ここをこうすれば……こうなるんだよなw


 おけい! はぁ〜絶対訳わからん事なってるわぁ……。

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