第9話 主人公の弱さを武器に変える。

 主人公の弱さを武器に変える。

 これはね、主人公の弱さに敢えて共感させるというか、ダメキャラを敢えて前面に押し出す変化球のようなものかもしれない。


 1980年代、時代はスーパーマンのような万能なヒーローを強く求めた。

 そこにあるのは弱者の叫びであり、強い者への憧れ、一部、ルサンチマンへの共鳴があったものの、時代はスーパーマン、ウルトラマン、仮面ライダーに、憧れを抱き、自分を投写させた。


 時代は潮流を右に変え、左にうねり、姿、顔を万華鏡のように日々変化させながらも、満たされた時代、飽食の時代へといつしか変化を遂げた。食べ物に困る若者はまったくいないとまでは言わないまでも少なくなり、どこを見渡しても物であふれた、デフレの時代へと突入した。


 貧乏人が麦を食う時代は終焉を迎え、中流階級がスタンダードになり大手を振るい、貧しいながらも食うに困らない若者が増えた。コンビニの役割も大きいのだろう。


 高校の無償化が叫ばれ、今まで以上に義務教育が高い次元で議論され、幼児保育も完全でないものの、ある程度は質実ともに担保されるようになった。教科書は、いつしか学習用のタブレットへと進化した。


 万能のスポーツ少年、美少年への需要は依然、高い水準で推移するものの、運動音痴のオタクや、カメコ、鉄道オタク、アニメを神と崇める若者に、光の影の役割として、スポットが当たり始めた。


 運動万能のスポーツ少年より、運動神経0の、運動音痴。

 少しメタボで、ダメキャラの主人公に共鳴する若者が増えたのは、ある意味、当然の成り行きだったのかもしれない。


 マンガの変遷を見れば、時代の移り変わりが見て取れると思いますが、今や時代は完璧なものを求めておらず、ナンバー1より、オンリー1を求める時代に突入した。


 どこか間抜けで、田吾作のような、見渡せばどこにでもいる、普通の少年にスポットが当たることが多くなった。


 そこで登場したのが、ダメキャラの薦めである。

 主人公の弱さに敢えて共感させる、そんな小説があってもいいような気がしてきました。


 こういうキャラは、見ていて、どこかホッとさせる、なごみ成分をふんだんに含んでいるんですよね。私もよく主人公に抜擢しています。


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