白い棟 (19/09/30 改訂)
かがやく白い棟の群れで
また 誰にも看取られぬ朝が来た
ベランダで座ったあと
ぼくはひどく浅く目をつぶる
そして幼いころ遊んでいたはずだった
瞼の裏の残像を何度もやり直すうちに
いびつな記憶は雨の匂いを連れて
白昼夢の方へと走っていった
(みずうみの いちばんふかいところへ
あおむけでしずんでいった おとこのこや、
紫の首筋がかわいい、白い肌の女子中学生と、
屋上で静かに、静かに話をした)
(はじめて見る雲の色がやけに気になったが、
眼下には電線がひしめき合って
空を飛ぶことはできなかった)
果たしてぼくは罰されるべきなのか
そうでなくてもいずれ五感から
崩れ落ちるという予感
それに何度も立ち向かうため
すべての神経はいきり立ち
他でもないここへと
確かにぼくを連れ戻してきたが
息を止めすぎたみたいだ
下を向いてしまうのは
夜のせいではなくて
ひとりぼっちの教室を思い出してしまったから
いつの間にか下着までびしょぬれで
体育座りのままぼくは倒れこむ
そう 苦しみを分かつことは
昔から得意なんだ
もう肌に 何も感じなくなった
頬を穿つはずの雨粒さえも ただ
いつまでも止まないことは知っていた
不感さえも幸せのひとつになりうるのだろうか?
遠くなる耳で聞きたかったのは
変わりない雨の音じゃなくて
あの話の続きだったのに
血液の流れがやがて水の音になり
増えも減りもしないアパートの隅で
ぼくはゆっくりと排水される
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