第106話 さようならフローン!

「うーん、最高の天気!」


 今日はいよいよフローン出発の日。

 雲一つない黄色の晴れ空、出発にふさわしい天気だね!


「凄いです! 沢山来てくれてます!」


「お見送りでいっぱいだニャー」


 起動エレベーターの前には、多くの宇宙人が集まっている。

 私達を見送るために、フローン中の住民が集まってくれたみたい。


 そして目の前には、私達の宇宙船がフワフワ浮かんでる。

 壊れてた部分はすっかり直って、ピカピカの新品みたいだ。

 金色でちょっと成金みたいだけどね。


「お嬢ちゃん達、出発の準備はよいかの?」


「うん、バッチリだよ!」


「私も準備は出来てます」


「ボクだっテ! 完璧だニャ!」


 チコタンとミィシャンは大丈夫そうだね。

 あとは──。


「お父様……お母様……」


「「エルリン……」」


 あとはエルリンだけ、今はご両親と出発前の挨拶をしている。


「エルリン、体に気をつけるんだぞ!」


「元気でね! 無理はしないでね!」


「はい! お父様もお母様も、お体に気をつけて。仲よく過ごしてくださいですの!」


 感動的だ……。

 感動的なお別れだ……。


「ぐすっ……それでは、ワタクシ行ってまいりますわ! 今までありがとうですの!!」


「「行ってらっしゃい、エルリン!」」


 涙を流しながら、ギュって抱きしめあってる。

 本当に大切な家族なんだね、ステキだな。

 うぅ……私まで涙が止まらないよ。


「どうしてソーラまで号泣してるのニャ?」


「きっとエルリンに感情移入しすぎているのですね」


「だって……うぅ……好きなんだもん、こういうの……」


 仕方ないよ、感動とかって私の弱点なんだよ。

 うなじと一緒だよ。


「あの……ソーラ様!」


「うん? あ、あの時の……」


 確かこの女の子は……町へ出かけた時、私に告白してくれた女の子だ!

 ハッキリ覚えてるよ、あの時は色々あったからね……。


「あの……私やっぱり、ソーラ様のこと大好きです!」


 はうぅっ!


「もっと仲よくなりたいです、ずっと一緒にいたいです!」


 はうはうぅっ!!


「でもソーラ様は、宇宙を旅しないといけないのですよね……だから私はフローンから、ソーラ様のことを想っています。いつかまたフローンへ遊びに来たら、その時は仲よくしてくださいね!」


 こんなにも私のことを好きでいてくれるなんて……。

 あぁ、出発したくなくなってきた。


「ソーラ様! 大好きです!!」


 よし! 出発中止だ!

 とりあえずダークマター分身で、私の分身をフローンに滞在させよう。

 第二ステージの力を見せつけてやる! ダークマター、私の元へ──。


「お待たせしましたわ。さあ、出発しましょう!」


「ソーラ、行きますよ」


「チコタンはそっち側を、エルリンは足を持ってナ。三人で運ぶヨ」


「分かりましたわ、よいしょっ」


 あれれ? チコタン、ミィシャン、エルリン、どうして私を引きずってるの?

 気がつけば宇宙船から光が降りてくる、体が吸い込まれていく。


「達者でのう、お嬢ちゃん達!」


「頑張るんだぞ、エルリン!」


「チコタンちゃん、またいつかフローンに遊びに来てねー!!」


「皆さん本当にいい人達でしたね」


「今度はマヤマヤとプヤプヤも連れて、遊びに来たいミャ」


「フフッ、その時はワタクシが案内しますわね!」


 待って、まだダークマター分身が終わってのに!


 ああぁ~……。


 吸い込まれる~……。


 ……。


「到着ニャ! ボク達のソーラ様号! パワーアップして“新ソーラ様号”だニャ!」


「凄くハイテクになっていますね、ピカピカでカッコいいです!」


「食料などの準備もしてくれていますのね、準備は万端ですわね!」


 三人とも嬉しそう。

 一緒に戦った、大切な宇宙船だもんね。

 綺麗に直ったことは嬉しいよ、だけど……。


「うぅ~……またお別れだよ……寂しいよ……」


 結局分身は出来なかった……ちゃんと皆にお別れも言えてないよ。


「気持ちを切り替えてください、私達はいつまでも一緒ですから」


「それに、第二ウェーブにもカワイイ女の子はいるヨ」


「新しい出会いですわね、楽しみですわ」


 ……確かに。

 チコタンの言う通り、こんなにカワイイ三人と一緒なんだから、全然平気かも。

 それにミィシャンの言う通り、第二ウェーブにもカワイイ宇宙人ちゃんはいるよね。

 そしてエルリンの言う通りだ、新しい出会いは楽しみだ!


 よし! かなり元気が出てきた。

 ところで三人とも、私の扱いが上手すぎないかな?


「では、出発しましょう!」


「いっくニャ~!」


「ワクワクしますわね!」


 おっと。

 もう出発だし、考えるのはあとにしよう。

 とにかく気持ちを切り替えていかなくちゃ。


 さようならフローンの皆、色々とありがとう!

 そして待ってて私の体、次は絶対にとり戻すからね!!


「さあ、第二ウェーブに向けて出発だ!」

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