第94話 目覚めるとそこは……天国?

「う……ん……んん!?」


 目覚めるとそこは、一面真っ白の不思議な空間でした。

 はて、ここはどこ? 私は誰……。


 いやいや、流石に自分のことは覚えてるか。

 名前は明峰空。元地球人の宇宙人で、今の名前はソーラ。

 うん、とりあえず記憶喪失とかではなさそうかな。


 でもここがどこなのか、まったく分からないよ。

 壁も天井も床も、どこを見ても真っ白の不思議な部屋。

 なんで私、こんなところで寝てるんだろう?


 確かスプリィムと戦って、私の体とも戦って、それから地下施設に行ったんだよね。

 住民のみんなを助けようとして、ダークマターを生命力に変換して、それを住民のみんなに分け与えて……それから……。

 ダメだ、その先はあんまり覚えていない。


 うーん……とりあえず起きた方がいいよね、ずっと寝てるわけにもいかないし……。


「……って、何これぇ……体が重いぃ……」


 ちょっと……尋常じゃないくらい、体が重たいんだけど……。

 立ちあがれる気はまったくしないよ、どうしよう……。


「ひゃわっ……ソーラ……?」


 おっと、突然のカワイイ声。

 振り向くとそこには天使……じゃなくて、チコタンだ。


「チコタン、おはよ──」


「ソーラァッ!!」


 ──っ! チコタン!?

 急に抱きついてきて、一体どうしたの!?

 もしかして目覚めのハグかな? いやでも、今まで目覚めのハグなんてされたことないけど……。

 うん、どうでもいいや! そんなことより、今はチコタンを堪能しよう。

 柔らかくていい匂い……。


「ソーラ……目覚めてよかったです……心配しました……」


「うん? 心配?」


「そうですよ! どれだけ心配したか──」


「チコタン! 今の声は何かニャ?」


「凄く大きな声でしたわ、大丈夫ですの?」


 おや、さらに二人の天使……じゃなくて、ミィシャンとエルリンも登場だ。

 相変わらず二人とも、超絶うちゅカワイイね。


「二人とも、おはよ──」


「「ソーラァッ!!」」


 なななっ、何が起きてるの!?

 まさか二人からもハグをされるなんて。


 あ、もしかして私、もう死んじゃってる?

 ここは天国なのかな? 目覚めるとそこは天国でした、っていうオチかな?

 ……まあそれでもいいや! そんなことより、今はミィシャンとエルリンを堪能しよう。

 モフモフでフワフワだ……。


「三人とも、わざわざ天国まで来てくれてありがとう! これからは永遠に愛し続けると誓うからね!」


「……ソーラ? 何を言っているのですか?」


「きっと目覚めたばかりで錯乱してるんだニャ……あるいは後遺症でおかしくなってるんだナ……」


「大変ですわ! 目を覚ましてくださーい!!」


 痛いっ!

 お願いエルリン、ビンタはホントに止めて。

 もの凄く痛いから。


「えっと……どういうこと? 私は死んじゃったんじゃないの?」


「縁起でもないことを言わないでください! ソーラはずっと寝込んでいたのですよ!」


「フローンの住民を助けたあと、すぐに倒れちゃったんだナ……それからずっと寝てたんだヨ」


「一週間も寝てましたのよ。ピクリとも動かなくて、ホントに心配しましたわ」


「一週間!?」


 そっか、フローンのみんなを助けようとして、途中で意識を失っちゃったんだ。

 ダークマターを集めすぎたのかな、きっと無理しすぎちゃたんだね。

 それにしても一週間か……それは三人とも心配して当然だよ。


「三人とも心配をかけてゴメンね、もう大丈夫だから!」


 ……あれ?

 三人とも固まっちゃってる、一体どうしたんだろう?


「ニャうん!」


 うえぇっ!? ミミミミィシャン!

 急に抱きつかれると心の準備が……あふふっ、ペロペロしないでぇ……。


「無事でよかったニャ! ホントにホントに無事でよかっタ……ニャウニャウ!!」


「ミィシャンずるいです! 私も!!」


 チコッ、チコタンまで!?

 マズいマズい! そんなにスリスリされると、変な気持ちになってきちゃうから!!


「ホントに心配したんですから! ソーラに何かあったらと思うと……うぅ……」


 分かった!

 分かったから、ちょっと落ちついて!!


「ソーラ……ワタクシも……」


 ギクリッ……。

 待ってエルリン……とりあえず冷静になって……。


「心配しましたわ! もう二度とあんなムチャはしないでくださいですの!!」


 エルリッ……ふわぁ。

 お顔の前に柔らかいフワフワだ……いい匂い……。


 あ……そっか……私は今日死ぬのか……。

 だってそうだよ……こんなに幸せなことってないもの……。


 ミィシャンのペロペロでしょ。

 チコタンのスリスリでしょ。

 エルリンのフワフワでしょ。


 これはきっと死ぬ前の、最後のご褒美なんだね。


「あら? 大変ですわっ、ソーラの鼻血が!」


「うナナナッ!? 鼻血で溢れ返ってるニャ!」


「ひゃわぁっ、急いで鼻血を止めなくちゃ!」


 あぁ……意識がもうろうとしてきた……。

 でも……うちゅカワイイ三人に囲まれて……私の生涯に悔いはない……。


「ソーラ! しっか──てください!」


「目を開──ニャ! ──を見るニャ!!」


「ダメ──わ、血──まりませ──!」


 さようなら……私は幸せだったよ……。


 チコタン……ミィシャン……エルリン……。


 大好き……。


「「「ソ~ラァ~ッ!!」」」

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