第90話 スプリィムの正体

 やった……やったよ!

 無事に本部を地上におろせた!!


 応援してくれたチコタン、ミィシャン、エルリンのおかげだ。

 あと、もの凄く頑張ってくれた、おじいちゃんのおかげだね!


「ふぅ……おっと……」


「ソーラ! 危ないニャ!」


 フラフラする……ダークマターの使いすぎだ。

 ミィシャンに支えてもらわなかったら、転んじゃうところだったよ。


「キツそうだニャ……大丈夫かナ?」


「心配しないで、私は大丈夫。だけど──」


「ひゅぃ~……ひゅぃ~……」


「おじい様! しっかりして、おじい様!!」


 おじいちゃん、今にも死にそうな呼吸をしてるよ。

 よっぽど無理してくれたんだね。


「気をしっかり持って! ワタクシの顔を見て!」


「おぉ……ばあさんや……久しぶりじゃな……」


「おばあ様はとっくの昔に亡くなっていますわよ! しっかりして!」


 幻覚まで見てるよ、ホントに大丈夫かな。

 まあ、元ユニオンマスターだし、大丈夫だとは思うけど。


 それにしても……もの凄く疲れた……。

 こんなに全力を出したのって、生まれてはじめてかも。

 しばらく動きたくないよ……。


「ひぃ……ひぃ……」


 うん? 誰の声だろう?

 おじいちゃんの虫の息かな?


「ひぃ……おのれ……特異点……」


 え……あのおばあさんは誰? 一体どこから出てきたの?

 うーん……なんだか見覚えあるような気もするけど……。


「あれって誰だろう? 知ってる?」


「知っているような……知らないような……誰でしょうか?」


「うナナ……あの虹色の髪……見たことあるようナ……」


「まさか……いえ、間違いありませんわ!」


 おや、エルリンは心当たりあるみたい。

 知りあいなのかな?


「待ちなさい! スプリィム!!」


「「「スプリィム!?」」」


 え? どういうこと?

 スプリィムって、あのスプリィムのこと?


「もう逃げ場はありませんわよ、大人しくしなさい!」


「ひいぃ……離せぇ……」


 確かにスプリィムの声だ。

 髪の毛の色もスプリィムそっくり。

 ホントにスプリィムなの!?


「なにぃ! スプリィムじゃと!!」


 おぉっ、おじいちゃん復活だ。

 さっきまで死にかけてたのに、スプリィムと聞いた途端に元気になったよ。

 よっぽど嫌いなんだね。


「スプリィムはどこじゃ!」


「大丈夫ですわ、もう捕まえました」


「スプリィム! 貴様……さてはダークマターを使って若作りしておったな!!」


「ひぃ……見るな……」


「クソが! ババアのくせに色仕掛けでワシを騙しおって! 許さんぞ!!」


 いやいや、おじいちゃん。

 怒る気持ちは分からなくもないけど、色仕掛けに負けたのはおじいちゃんの責任でしょ。

 エロジジイなのが悪いんだよ。


「ぐうぅ……住民の命を……もっと使えていれば……」


 この期に及んで、まだあんなこと言ってるよ。

 これ以上住民の命を削ろうだなんて……あっ!


「そうだ! 眠ってる住民を助けなくちゃ!」


「そうでしたわ、お父様とお母様が待っていますわ!」


「本部の倒壊ですっかり忘れてました、急ぎましょう!」


「場所はどこかニャ? どうやって行くニャ?」


 場所は……えっと……分かんない。

 そうだよね、まずは場所を確認しなくちゃね。


「エルリンかおじいちゃんは、場所を知らない?」


「残念ながら、地下施設までは把握していませんわ」


「ワシも知らん、しかし問題ないぞ。スプリィムに案内させればよいのじゃ」


 なるほど、確かに。

 おじいちゃん、意外と冷静だ。


「フフッ……案内なんて……するわけないでしょう……」


「……そうか……」


 う……空気がビリビリする。

 おじいちゃん、もの凄く怒ってる?


「悪いことは言わん、素直に案内せい……さもなくば……“メスブタの刑”じゃぞ……?」


「メスブタの刑!? ひぃ……教える……教えるわ……」


 おぉっ、流石おじいちゃん!

 もの凄い威圧感で、スプリィムを従わせちゃったよ。

 ところで、メスブタの刑って一体なんだろう……?


「よし、では行くとしようかの」


 うーん……メスブタの刑が凄く気になるけど……今はとりあえず置いておこう。

 とにかくこれで、地下施設まで行ける!


 さあ、みんなを助けに行こう!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る