第87話 ソーラのうなじを狙え!

「狙うはソーラの“うなじ”です! いきますよ!!」


「うナ! ソーラの“うなじ”を目指すニャ~!!」


「ええ! ソーラの“うなじ”は、必ずいただきますわよ!!」


 ちょっと!

 そんなに大きい声で、うなじうなじって連呼しないでよ。

 かなり恥ずかしいんだから!


「ではまずソーラ、お願いします!」


 うぅ……ええい! 恥ずかしがってる場合じゃない!

 分かったよ、やってやるんだから!


「いくよ! ダークマター!!」


 まずはワープだ!

 相手の後ろに回り込んで──。


「空間にダークマターのゆがみを確認しました、妨害します」


「──っ!? ワープ出来ない!」


「ダークマターで妨害されたのですわね、流石は特異点の力ですわ」


「くぅっ、だったら次の作戦だ!」


 ダークマター! 今度は幻!

 相手をかく乱するよ!


「敵個体数の増加を確認、攻撃に移ります」


 よし! 

 狙い通り、幻に気を取られてる。


「チコタン! ミィシャン! エルリン! 今だよ!!」


「はいっ、チコチコガード展開!」


 作戦通り、チコタンを先頭にして、三人とも飛び出していった。

 私はここでおじいちゃんを守りながら、相手の注意をそらす役だ。


「幻! もっともっと、沢山出てきて!!」


「敵個体に異常を確認……解析……解析……実態を確認出来ませんでした。幻影であると判断します」


 うっ、もうバレちゃったよ……だったら次の手だ!

 幻を囮にして、音と光で目くらまし!


 ダークマター、爆発だ!!


「ぐっ……視覚、聴覚に甚大なダメージを確認しました。感覚器による状況把握は困難……ダークマターによる状況把握を実行します。敵の位置は……」


 動きが止まった、チャンス!


「今だニャ! ミィビット達、頑張るニャ!!」


「敵影を多数補足、排除します。続いての敵影を排除します。続いての敵影を排除──」


 ミィシャン凄い!

 プチネコUFOをうまく操って、相手の気をそらしてる。

 三人とも相手のすぐ後ろまで迫ってるよ、いい調子だ!


「防御は私に任せて! ミィシャンはうなじをお願いします!」


「うナ! うなじはいただくニャ~!! あニャッ!?」


 あれはっ、ダークマターの膜が張られてる!

 スプリィムと同じように、体の周りをダークマターで守ってるんだね。

 あれを破らないと、うなじも狙えないよ。


 だけど……。


「想定内ですわよ!」


 そう、ダークマターの防御なんて想定内だよ!

 そして、対抗策もバッチリ考えてある。


「ワタクシのダークマターで、相手のダークマターを中和しますわ!」


 エルリンのおじいちゃんと同じ技、その名も“ダークマター中和”だ。

 流石ユニオンマスターの孫、おじいちゃんと同じ技もちゃんと使えるみたい。

 おじいちゃんほど完ぺきではないって言ってたけど、そこは私も力を貸せばいい!


「いきますわよ! ダークマター!!」


 こっちもいくよ、ダークマター! 

 相手の前側にだけ圧力をかけて。後ろ側の防御を薄くして!!


「前面からの干渉を確認しました、防御します。背面からの干渉も確認しました、抵抗に必要なダークマターが不足……」


「いけますわ! このまま防御に穴をあけますわよ!!」


「ダークマター……中和されます……」


 分かる、防御がどんどん薄くなってる!

 もう少しだ、頑張れエルリン!


 いっけぇっ!!


「やった……突破しましたわ! ミィシャン!!」


「任せるニャ!」


 ついに防御を突破だ! あとはトドメの必殺技!!

 そこだ! ミィシャン!!


「うニャァ! くらうニャッ!!」


「ダークマターによる防御を……うひゃっ!?」


 決まったぁっ!

 ミィシャン必殺の……しっぽくすぐりだ!!


 ミィシャンのフワフワしっぽで、私のうなじをくすぐってるよ。

 見てるだけでゾワゾワしてきちゃう、あれは私の体じゃ耐えられないね。


「くくくっ、首が!?」


「まだまだニャ! うりゃりゃりゃナ!!」


「うくくくっ!? 体の制御……不能うぅ……っ」


 今だ! ダークマター最大出力!!

 私の体を拘束して!!


「ぐぅっ!? 行動不能です……行動不能……行動……不能……」


「はぁ……はぁ……やった……」


 止まった……止めた……!


「やりました……」


「やったニャ……!」


「やりましたわ!!」


「チコタン! ミィシャン! エルリン!」


「「「ソーラ!!」」」


 やった! やったよ!!

 ついに私の体を止めた。

 やっぱり私達は最強! 四人揃えば無敵だ!!


「これで私達の勝利──」


《ヴェーゼ統括本部から連絡です──》


「……え?」

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