第79話 エルリンの涙

 許さない!

 こいつは絶対に許さない!!


「スプリイィム!!」


「フフフッ……凄まじいダークマターねぇ、ゾクゾクするわ」


「うるさい!!」


 チコタンとミィシャンの敵討ちだ!

 ダークマター! 集まれぇ!!


「きゃあぁっ!? 震えていますわ! ダークマターが震えています!!」


「お嬢ちゃんの怒りに共鳴しておるのじゃ! なんという強力な力じゃ……」


 力を……スプリィムを倒す力を……!

 まだまだ集まれ! もっともっとぉ!!


「ぬおぉ……尋常ではないダークマターじゃ! このままでは……っ」


「ソーラはどうなってしまいますの?」


「ダークマターを暴走させてしまうじゃろう、お嬢ちゃんも無事ではすまんぞ!」


「そんなっ!」


 繋がってる……フローン中のダークマターと繋がってる……。

 全てを力に変えて……スプリィムを倒す力に変えて!!


「そんなにダークマターを集めて、ちゃんと制御は出来るのかしらねぇ?」


「うるさいって言ってるの!」


 力は十分に集まった。

 スプリィム、覚悟──。


「ソーラ! 待ってくださいですわ!!」


「エルリン!?」


「落ちついてください! このままでは暴走しますわよ!!」


「そんなの関係ないよ! チコタンとミィシャンの敵討ちをするの!!」


「聞いてください! ソーラも無事ではすみませんわ!!」


「エルリンは黙ってて! 私はどうなってもいいから!!」


「ソーラ……」


「とにかくあいつを倒すの! 二人の分まで──」


「このっ、落ち着きなさぁいっ!!」


 ──っ!?


 ……痛……?


 ほっぺたがジンジンする……。


「どうなってもいいですって? ふざけんなですわっ!!」


 ──痛っ!


「チコタンとミィシャンを大切に思っていることは知っています! でも同じくらい、ソーラも大切な友達ですのよ!!」


 ──痛いっ!!


「ソーラも! チコタンも! ミィシャンも! 大切な友達なのですわ!!」


 ……痛いよ……とっても痛い……。


「どうなってもいいだなんて、二度と言わないで……また同じことを言ったら、許しませんわよ……ぐすっ……」


 叩かれたほっぺたも痛いけど……それ以上に胸が痛いよ……。


「……ごめん……」


 友達のことを大切に思ってるのは、私だけじゃないよね。

 チコタンもミィシャンも、エルリンだって私のことを大切に思ってくれてる。

 三回もビンタするくらい、私のことを大切に思ってくれてるんだ。

 そんなことも忘れて……私はエルリンを泣かせちゃった……。


「エルリン……ごめんなさい……」


「ううぅ……もっと自分を大切にして……」


「うん……約束するよ」


 ふぅ……ダークマター、静まって。

 騒がせてゴメンね。


「はぁ……取り乱してしまいましたわ……痛くなかったですの?」


「とっても痛かったよ、でもおかげで目が覚めた!」


 ありがとうエルリン。

 一緒にいてくれて、叱ってくれてホントにありがとう。


「もう大丈夫そうですわね」


「うん、心配かけたね」


 おかげで気持ちは落ちついた。

 ダークマターもうまく制御出来てる。

 気合いは十分! スプリィムにだって負けない!!


「今のソーラなら安心ですわね、それでは……」


「うん、分かってる!」


「チコタンとミィシャンは、ワタクシ達に任せておいて!」


「私はスプリィムをやっつけてくるよ!!」


 さあ、今度こそ勝負だ!

 いくぞ! スプリィム!!

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