第7話 本物のゴミクズ

 ヤバいヤバい! マジでヤバい!!

 ドアを開けたら宇宙人だらけ、こんな状況は流石に想定外だよ。

 完全に入っちゃダメな部屋だった。


 しかもコイツら、銃みたいなもの持ってるし。こっちに向けてるし。

 めちゃくちゃ怖いんですけど!


 それと、真ん中で偉そうにしてるアイツ!

 出っ歯で緑色の宇宙人、あれはどうみても悪人顔でしょ。


「ソーラ……怖いです……」


「大丈夫、なんとかするから」


 そうだった、チコタンもいるんだから、私がしっかりしなくちゃ。

 なんとか逃げ道を探すのよ。

 右は宇宙人だらけ、左も宇宙人だらけ、部屋の奥は……。

 あれ? 奥に見えるあの水槽、中に入ってるのって。


「私だ! 見つけた!!」


 私の体、発見!

 よかった、無事だったのねマイボディ。

 見慣れてたはずの顔、髪、体、全てが懐かしく感じるよ。

 あとは無事に取り戻せれば、一つ目の目的は達成かな。


 ところで、せめて服くらいは着させておいほしいな。

 いくら宇宙人相手でも、素っ裸で標本みたいにプカプカ浮かんでるのは流石にちょっと恥ずかしいよ。

 そういえば無駄毛ってちゃんと処理してたかな……。

 いやいや、それよりも今はこの状況をなんとかしなくちゃだよね。


「私の体? 特異点のことを言っているのか?」


 あれ? コイツの声、聞き覚えある……。

 そうだ! 学校からの帰り道で、私に声をかけてきた不審者だ!

 はっきり思いだした。私、この変態に攫われたんだ、


「不審者? 変態? なるほど合点がいったぞ。お主さては、特異点の娘だな?」


 うぇっ、またバレてるよ、あの時と同じだ。

 これって完全に心が読まれてるよね、宇宙人ってそういう能力があるのかな?

 まあでも、やることは変わらないし、心が読まれてても関係ないか。


「なるほど、分離した特異点の精神が見習いの体に宿ったのか、興味深い現象だ」


「だったら何? 私はそこにある自分の体を取り戻すの。そしてこの体、ユイタソちゃんを実験に使ったゴミ野郎を探すの。忙しいんだから邪魔しないでくれる?」


「ほう? よかったではないか、探しものはここに揃っているぞ」


 揃ってる? 何言ってんのコイツ? 


「勘の悪い娘だな。その体、ユイタソに心身分離術を施したのはこの私、ゲスーチ様だと言っているのだ」


 ああ、そういうことか。

 よし、ゴミ野郎も発見。自分から名乗りでてくれてどうも。

 ゲスーチか、名前の通りゲスい顔してる。


「一応聞くけど、どうしてユイタソちゃんを実験に使ったの?」


「愚問だな。特異点の体を手に入れるためには、心身分離術を行う必要があった。だが心身分離術はシステムが安定しないのだよ、そこでユイタソを使い実験したのだ。お陰で本番は上手くいったぞ」


 ふーん、案の定クズでゲスな理由だったか。


「ゲスーチ様……どうして……」


「チコタンか。本当は成績の悪かった貴様を実験動物に使いたかったのだが、ユイタソが自ら実験動物に志願したのだ。全くもって馬鹿な小娘よ」


「ひどいっ……私達の命をなんだと思っているのですか!?」


「ハッハッハッ、見習い研究員の命より特異点確保の方が重要に決まっておるだろう? それに比べれば貴様等の命などゴミ同然よ」


「ううぅ……そんなぁ……」


 ……は?

 このゴミ野郎、マジで何を言ってんの?

 本気で一ミリも理解が出来ない。

 実験動物? ゴミ同然? この子達が?


「ふんっ、やはり地球人は低脳で遅れておる。貴様ごときに理解してもらおうとは思わんよ」


 あぁ、また心が読まれてるのかな? そうですかそうですか。


「ま、そんなのどうでもいいけどね」


 よく分かった、コイツ本物のゴミクズだ。

 胸糞悪すぎて血管が切れそう。

 絶対に一発ぶん殴ってやる。


「暴力か、地球人らしく原始的なことよ。しかし、特異点を失った精神だけの小娘に何が出来る?」


 ……うるさいゴミクズだ。


「教えておいてやろう。見習い研究員の命も、地球人の小娘の精神も、特異点に比べればなんの重みも無いゴミだ」


 地球人だの宇宙人だの。

 特異点だの見習いだの。

 そんなことはどうだっていい!


「人の命に、重いも軽いもあるもんかぁ!!」


 命を軽く扱うやつは、絶対に許さないんだから!!

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