夢のはなし

よる

 目が覚めると私は樹海の中にいて、長いことその場所で迷子になっていた。


 樹海の中は暗い。昼なんだか夜なんだか分からない。時々葉と葉の間からゆらゆらと光が射し込んだ。ここでは時間があるようでない。

 変わらない景色の中あてもなく歩いては立ち止まってそういうのを繰り返していた。


 そんなある日だった。どこかでピアノの音が聞こえた。 

 必死にその音の正体を探した。 

 いつもより運ぶ足は速くなり、見失うと焦って辺りを見回した。


 樹海は暗くて先が見えない。広さなんて想像もつかない。だから足を進めるのはとても不安でしかなかった。後ろを振り返っても戻りたくても、戻れなかった。

 静かで冷たいこの波に呑まれてしまったら、溺れてしまいそうだ。

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