第15話朝日と呪詛と


「兄さん。朝ですよ。起きてください」

「ん……」


 春も中頃。アリスの声で俺は起床した。そしてアリスを見る。馬鹿か? そう思えるアリスの姿だった。いわゆる……裸エプロン。バインボインな胸がエプロン越しに張り詰めていた。何をしているのか?


「残念。水着エプロンでした」


 ヒラリと一回転。エプロン以外は……ビキニの水着で大事なところを隠していた。ただそれでアリスの贅沢な体つきは隠せていないわけで。


「十八禁スレスレだなぁ」


 他に述べようもない。


「兄さん? 発情しましたか?」

「それはするよ。するさ。俺だって一般的な男子だ」

「えへへ……。照れますね」


 だったら挑発するな……と言いたいところだが、多分天然だろう。アリスに限っては。普通にエッチな妹という観測で間違いはない。それどころか俺のためなら全裸になるも惜しくない逸材だ。逸材の言葉の使い方は間違っているにしても。


「それで兄さん」

「何か?」

「呪詛の処置を」

「ああ、そうね」


 アリスがエプロンを取り外す。ビキニ姿の女体が現われた。乳房の大きさは常識外。それだけでも特筆に値する。


「それじゃ、やりますか」


 俺の治癒能力。触れた相手の不利を無くす超能力だ。


「……………………」


 スッとアリスの胸元に手を添える。大きな爆乳の間にある谷間に手を当てて、呪詛を取り除く。正確な表現で無いにしても。


「ん……ぁは……ひゃ……」


 感じ入るアリス。この呪詛の除去は性的に興奮するらしい。どんな原理かは俺も知らないんだが。それでもアリスが快感に溺れているのは見て取れた。


「兄……さん……あん……っ!」

「その嬌声を止めろ。変な気分になる」

「むしろなって欲しいです。ちょっと性欲がわき上がって」

「トイレに行け」


 ピッと人差し指でお手洗いを示す。


「失礼します!」


 瞬発的にアリスはトイレに籠もった。何をしているか……は言うだけ野暮だし想像するだけ野暮だ。


「ふう。春の朝は暖かいですね」


 一仕事終えたアリスは額の汗を拭って、そう述べた。ツッコミは入れない方向で。俺としても普通に邪気だ。この身体を取り巻く性欲が。


「というわけで朝食です」


 そんな感じで朝食が始まった。

 トーストとハムエッグ。レタスサラダにコンソメスープ。


「美味しそうだな」

「美味しく作ったつもりです。不満があれば忌憚のない意見をください」


 シャクリとトーストを食む。


「うん。美味い」

「本当ですか?」

「お世辞は言わない。それにアリスの料理上手は身に染みているしな。これくらいで計れる力量でないことは存分に把握している」

「兄さん! 抱いて!」

「却下」


 コレをうちの妹は本気で言うんだから。


「私のおっぱいを触っておいて……」

「胸元な。谷間だ谷間」


 呪詛を除去するに必要な接触。


「おっぱい揉んでもいいんですよ?」

「魅力的な提案だな」


 肩をすくめる。普通に考えて、ノンストップ待った無しの状況だ。こんなおっぱいを見せられて誰が我慢できるだろう? けれど俺は乗せられない。俺はアリスの兄さんだから。


「俺より格好良い男子を見繕えばいいのか?」

「ついでに私の呪詛を取り除ければ言うこと無しですね」

「それだよなぁ」


 アリスの呪詛を抑制できるのは現時点で俺だけだ。誇らしいことではあるも、ある種の呪いには相違ない。しかも継続的に呪詛を取り除く。ソレが出来なければ意味は無い。その点で言って、俺はあまりにアリスに適合しすぎている。


「誰の采配なんだか」


 嘆息せざるを得ない。

 普通に考えて有り得ざる方程式。別にアリスが悪いわけでも無いも。


「兄さんはヘタレです」

「それは俺もそう思う」


 ――こんなおっぱいを見せつけられて、溺れない男子がいる物か?


 そうは思えど、俺にも理性はあって。だからこそ、俺にとってアリスのパイオツはかけがえのない物と言える。何時でも揉めるなら、何時揉んでも良い。バインボインなアリスの乳房は揉みしだくに値する。


「兄さんだって私で欲情しているのでしょう?」

「していない方が嘘だと思うがな」


 コレは本音。

 実際にその通りだ。


「では揉んで揉んで寝るまで揉んでください!」

「そう云うよな」


 嘆息。普通に有り得る話ではあった。


「呪詛は対処したからもう良いでしょ」

「兄さんにだけですよ」


 ブバッと喀血しそうになる。血を吐きたいくらい、アリスのおっぱいは魅力的だ。それこそおっぱい神のおっぱい教がよく分からない悟りを開くほどには。


「兄さんになら幾らでも揉ませて差し上げますから」

「それをここで言わない」

「でも積極的にならないと、兄さんは常識に囚われますし」

「ソレが普通なんだって気付こうや……」


 言ってる俺の側に説得力が無いわけだが。


「えい」


 ボインとおっぱいをダイニングテーブルに乗せるアリス。その超重量はフィジカルにおいても破格だった。


「好きにして良いんですよ?」

「そんな誘惑には決して負けない!」

「にしては視線が注がれていますが?」

「青春男子の妄念を舐めるなよ!」

「妄念通りにしていただいて構いませんけど……」

「そういうよな」


 嘆息。


「自分でおっぱい揉むにも限度はありますし」


 フニフニ。揉み揉み。柔らかなおっぱいが変幻自在に形を変える。パイオツの無謬性の象徴だ。おっぱいは正義。おっぱいはジャスティス。おっぱいはインフィニットジャスティス。だからこそ在学生はアリスのおっぱいに夢中なのだから。

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