第50話
次に目を開けたとき、俺は、研究室の中に居た……
懐かしい匂いがした……
懐かしい感覚がした……
生きている銘が、そこに居た……
銘は、俺の姿を確認すると、飛びつくように俺の体を抱きしめた。
まるで、子供が泣きじゃくるように、声を出して泣いた。
俺よりも年下なのに、いつも大人ぶっていた。
精一杯背伸びして、俺よりもお姉さんであろうとした銘……
そんな銘が、今涙をぼろぼろ流し、涙も拭かず俺の体にしがみついた。
「帰って来ないと思っていた。」
この時、初めて自分がどんだけ残酷な事をしたのか……
それが初めてわかった気がする。
俺も、銘の体を力強く抱きしめた。
「ただいま……」
銘は、涙を流しながらはっきりとした口調で言った。
「もう、どこにもいかないで……」
「ああ、どこにも行かない……
だから、これからも、ずっと一緒に居てもいいかな?」
俺の胸で涙を流し……
残酷な事をした俺を、受け入れてくれる銘を見ると……
絶対に幸せにしてやろうと思った……
だから、銘の手が血まみれになっている事など気になどならなかった。
『その事』には、一生触れないでいこう……
そう心に誓った……
答えは、心の中に……
おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます