第44話


「思い出を作ろうね。」


深雪は、そう言うと俺の手を引っ張り夜行バスへと向かった。


いつも以上にはしゃぎ。

いつも以上に甘えてきた。


一生懸命元気付けようとしてくれる気持ちが痛かった。

そして、すぐにそれが、顔に出てしまう自分が情けなかった。


「伸二?大丈夫だよ。大丈夫」


その度に深雪は、そう言って俺を励ました。

そして、引っ張られやってきた先は・・・


景色が良く見える見覚えのある高い丘だった。


「ここから見える景色には、家やビルしかないけれど・・・

 その家やビルの中には、色んな人が居るんだよね」


深雪は何を言っているのだろう・・・


「その人の中には、色んな事をやり直したくても・・・

 どんなに頑張ってもやり直す事が出来ない人も居る。」


「でも、伸二は違うんだよね?」


「・・・え?」


「時間を戻れる薬、作ったんでしょ?

 それで、私を助けてくれたんだよね?」


「ああ・・・

 ってか、信じてくれてたのか??」


「あはは・・・

 伸二との付き合い長いもん。

 嘘をついているかいないかなんてすぐにわかるよ。」


深雪はニコリと笑い言葉を続けた。


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