第36話

そんな俺の不安なんて、全く関係ないと言わんばかりに

深雪は、俺の腕を引っ張り、深雪のマンションの階段を降り始めた。


「そこの角を曲がってすぐだからね♪」


「いや、深雪。」


「なぁに?」


深雪は、これ以上無いくらい機嫌が良かった。


「俺、スーツとかの方が良くないか??」


「うんん♪

 家に帰るだけなんだし、そんなに気にしなくてもいいよー」


確かに、深雪は家に帰るだけだろうけど・・・


「はい、到着♪」


深雪の実家とは、驚くほど近かった。

この距離で二年間全く会わなかったのか・・・


「ただいまー♪」


深雪は徐に、玄関のドアを開けた。

ゆっくりと足跡の音が響き、懐かしい深雪の父親の顔を見た。

想像していたよりも穏やかな顔で、そして優しく俺達を迎え入れてくれた。


「いらっしゃい伸二君。」


そっか。

そう言えば、俺は深雪が死んだ未来でこの人と会った事あったじゃないか・・・

そして、深雪を救えなかった俺にでさえ、優しく扱ってくれたじゃないか・・・

俺の不安は、すぐに消え、深雪の父親に挨拶をした。

案内された部屋には、深雪の母親の位牌があり真新しい蝋燭が立てられていた。

俺と深雪は、母親に手を合わせた後、深雪の父親に改めて挨拶をした。

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