第26話


2時間ほど、子守をした。

今の子は、迷子になっている事を気づいているのか、たくましいのか・・・

泣き喚く子が、居なくて少し助かった。


「おつかれさま」


と、少しはなれた所から深雪が俺に手を振ってくれていた。


俺は、その場で大の字になって横になった。

するとユラユラと揺れるヴェールが俺の視界の中に入ってきた。

深雪もそのヴェールを眺めていた。


「ママゴトをやろうか……?」


俺は、何故だかそんな事を言っていた。

深雪は、きょとんとした顔で俺を見つめた。


「俺が父親で、深雪は母親、美穂は子供だ……」


深雪は、目を潤ませながら、こう言った。


「私達、結婚して無いよ?結婚指輪は?」


これは、あの時のやりとりを思い浮かべながらゆっくりと呟いた。


「手を出して……」


深雪は、そっと手を出した。

俺は、ポケットから指輪を取り出し、こう言った。


「結婚してください」


もう、あの時みたいに、三年以内なんて言わない。

今すぐ、幸せになりたい。

今すぐ、幸せにしてあげたい。


深雪は、コクリと頷くと指輪を握り締め涙を流した。

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