第2章:過去へ向かって
第8話
未来で生きた僕
そして……
過去で生きた君へ……
出会いは偶然、別れは必然。
俺は選択しなければいけない。
二人のうちどちらかを……
<<9>>
銘は、寂しげな表情で俺を見つめた……
「話は、加藤君から聞いたよ……」
「何を?」
「貴方が、前の婚約者を助けるために、タイムマシンを買おうとしているって……
その為に、若返りの薬を開発しようとしているって……」
「そうか……」
俺は、それ以上彼女には何も尋ねなかった……
彼女は、無言で、瓶の蓋を開くと……
「手伝うよ……」
と、小さく呟いた……
若返りの薬とは、理論上可能な事であり、薬学技術の進んだ、現在に置いては、
かなり現実的なモノであった。
俺達は、朝も昼も夢中で開発にいそしんだ……
薬の試作品【A201】が、完成したのは、それから3ヵ月後の事だった……
完成した時、妻が一言呟いた。
「昔、薬を飲んだら子供になるアニメってなかった?」
「あったな……
そんな話……」
と、俺達は失笑した。
理論上、この薬を飲めば、接種したこの水分が血液に変わり、内蔵機能から細
胞の活性化が起きて……
肌や髪等が若返ると言う仕組みだった……
しかし、この薬には欠点があった。
一ヶ月以上、飲み続けないと効果が期待出来ないのだ……
俺達は、それを承知で、薬の開発をしていた。
「じゃ……飲むね?」
何が起きるかわからなかった。
だから、俺は妻の見守る中、薬を飲み込む前に、少し、舐めてみた。
味は、しなかったが……
少し舌がぴりぴりした。
「昔、薬を飲んだら子供になるアニメってなかった?」
先ほどと同じセリフが、聞こえて来た。
「あれ?
さっきも、同じ事言ってなかった?」
俺は、思わず尋ねてしまった。
すると、妻は不思議そうな顔をしていた。
「デジャブ?貴方、疲れすぎてるんだわ……
これが、終わったら、お休みになって……」
俺は、もう一度、さっきと同じタイミングで、薬を舐めてみた。
「昔、薬を飲んだら子供になるアニメってなかった?」
「…………………………」
時計の針を確かめると……
時間は戻っていた。
俺は、薬を予備の分までかき集めると、その薬を全てを一つのコップに集め、
飲み干した。
妻は、きょとんとした顔で、俺を見ていたのを覚えている……
もしかすると、過去へ戻れるのかもしれない……
俺は、なぜだか……
そう、期待せずには居られなかった……
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