if~未来で生きた君へ
はらぺこおねこ。
第1章:深雪
第1話
待ち合わせの時間になっても、深雪は来ない。
いつもの事だ。
出会ったのは、幼稚園の頃。
付き合いだしたのは、大学に入ってから。
付き合いだしてから。
気付いた。
深雪は遅刻魔だと……
だから、大抵は予定の時間よりかは、早めに時間を伝えるようにしている。
「ごめ~ん。
待った?」
その呑気で悪いともヒト欠片も感じてない声で、背後から声を掛ける女性の声。
振り向くと、そこには寝癖のままの深雪が居た。
もう、24だろ。
心の中で、呟いた。
「ああ……
小一時間程、待ったよ」
「えぇ~そんなにも~?
合鍵渡してあるんだから、起しに来てくれたらよかったのに~」
と、深雪は、顔を膨らませた。
「……待ち合わせじゃないと、デートじゃないって、深雪、言ってなかった?」
すると、罰が悪そうな顔をして、照れくさそうにこう言った。
「しゅ……主役は、遅れて来るもんなのよ」
「……じゃ、俺は脇役?」
「さぁ!付き人Aよ!
姫を、水族館まで案内せい!」
と、スタスタ歩いて行った。
「はい、はい。
おうせのままにお姫様」
すると、無邪気な顔で、俺の腕にまとわりついて来た。
いつも以上に、ニコニコと笑っていた。
「なんか、今日はご機嫌だな?」
「だって、伸二。
最近、全然構ってくれなかったから」
「そ、そうか?」
「そりゃ。
お薬の開発は大切だけどさ。
私の事も、大切にして欲しいな」
「…ごめん。
でも、俺は薬は愛してないけど深雪の事は……」
俺が、そう言いかけた時、深雪は俺の口に飴玉を放り込んだ。
「そう言う事は、デートの最後に言って欲しいな~♪」
と、明るい口調で言った。
「って言うか。
深雪だって、仕事で休みが中々とれないんじゃないか……」
「ふ……私は、薬を愛しているもの……」
と、また悪戯ぽっく笑った。
チケットを受付で渡して中に入ると、ヒンヤリとした空気が妙に心地よかった。
もう、夏なんだよな。
変な話だが、今になって、そう感じて。
ひんやり感じた空気が寒く感じた時。
彼女の肌が暖かく感じた。
そして、俺は、彼女に引かれるままその日を過ごした。
……………
…………
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