第81話【忘れかけていた二人の秘密】
日曜日は終日部活に明け暮れ、晩飯を食った後は身体を引きずるようにしてベッドにダイブ。
普段だったら疲労感に身を任せてそのまま寝てしまうところなのだが、俺は内心やたらとモヤモヤしていた。
『ま、なかなか上手くいかないもんさ。クジ引きなんて』
映画を見た直後、緋彩さんはそんなことを言っていた。
あの時は意味が分からずにスルーしてしまったけど、昨日の夜にボーっとそのことを考えていたら、もしやと思うことがあった。
勿体つけずに結論から言ってしまえば、あのとき右隣りにいたのは実は緋彩さんではなかったんじゃないかってことだ。
「いや、でもなぁ」
ただ、そうなると右側に座っていたのは宮本ということになる。
姫乃は左隣りにいたのが確定しているし、緋彩さんだとしたら会話の流れに違和感がある。3人以外の知らない人っていう可能性もゼロではないけど、まあ流石にないだろう。
もし右にいたのが宮本だってなら、アレは一体なんだったんだ……?
指を絡められたり手の甲を思いっきりつねられたり撫でられたり、あの2時間はそっちが気になって正直映画どころじゃなかった。
緋彩さんがやったってならまだ分かる。でも、宮本があんなことするか?
「いや、しねえよなぁ」
そんな自問自答を昨日から繰り返しちゃいるが、当然どこまで続けても憶測の域は出ない。
「いっそ直接聞いてみるか?」
考えてたって答えが出る訳じゃないし、そっちの方が早い気がする。
俺は寝っころがったままスマホを手に取り、宮本とのラインを開く。
『俺の右手撫でまわしてたのって、宮本?』
……いや、アホか。
3分ぐらい悩んだ末に完成した文章を、躊躇なく全消去。
なんて切り出したらいいのか分からないにせよ、我ながら文才が無さすぎる。
「ダメだ、頭回んね」
体力が底をついた身体に急激に眠気が押し寄せ、俺はスマホを枕元に投げ出した。
ま、タイミングを見てそのうち聞いてみるか。
そう思った俺が目を閉じようとしたその時──
「ん?」
枕元のスマホがブブッと短く振動した。
冬馬がくだらないラインでもしてきたのかと寝そべりながらスマホを手に取った俺は、画面に表示された「宮本唯」という文字を見て飛び起きた。
「な、なんだ?」
連絡を断念した相手からのコンタクトに、一瞬で眠気が消し飛ぶ。
何の用かと考える間もなくトーク画面を開くと、なにやらツイッターのリンクが貼られていたのでそれをクリック。
「えっと……………………はぁ!?」
表示されたツイートを見て、思わず大声が漏れる。
そのツイートをしていたのは2週間前に宮本が発見した『美女図鑑NO.7』。
前回と同様に文章はなく、写真が1枚貼り付けられていた。
「マジかよ」
その写真には宮本の横顔がバッチリ写っていて、なんなら横に立つ緋彩さんの私服も見切れていた。
宮本のラフな格好にしても緋彩さんの服にしても、強烈に見覚えがある。なんてったって、それを見たのはつい昨日のことだから。
『柏くん、どうしよう』
映画館のエントランスで腰に片手を当てる宮本の写真を茫然と見ていると、本人から続けて文章が送られて来た。
『また隠し撮りされて晒されてる』
『ホントにストーカーかもしれない』
2週間前に見送って忘れかけていた問題が、スマホを通して再び突き付けられた。
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